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第一回 角川書店への持ち込み

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 エッセイ&日記にも以前書いたが、私は新人賞という名の付くものに応募したのは、一回しかなくて(名の付かないものにはいくつかあるが)、5年前の「文學界新人賞」がそれである。この時はかすりもしなかった。
 しかし、実はそれ以前に、あの「角川書店」に持ち込みを敢行するという暴挙を行っていたのである。
 今から9年前。高校3年生だった私は、30枚の短編をリュックに入れ、学校帰りの学ラン姿で東京へ向かっていた。なぜ新人賞に応募せず、直接持っていったのかはいまだによくわからないのだが、私の中で高まる何かがあったのだろう。
 実際、私の頭の中では、


「自分の書いた小説を是非読んでもらいたいと思ってここに来ました」
受付嬢
「うーん、いや、ちょっとそういうのは受け付けてないんですけど……」

「そこをなんとかお願いします!」
受付嬢
「でも、私の一存では……」

 ここで若くてバイタリティのある編集者が偶然通りかかる

編集者
「どうしたの?」
受付嬢
「いや、この方が自分の小説を見てほしいと仰って……」
編集者
「どんな小説なんだい?」

「人間の心理を鋭くえぐった小説です。読んでもらえればわかります!」
編集者
「……よし、じゃあちょっと見よう。付いてきなさい」

「は、はい!!」

 という妄想ドラマが小田急に乗っている間、延々と展開されていたが、いざ角川書店に行ってみるとこうだった。


「自分の書いた小説を是非読んでもらいたいと思ってここに来ました」
受付嬢
「うーん、いや、ちょっとそういうのは受け付けてないんですけど……」

「そこをなんとかお願いします!」
受付嬢
「どんな小説なんですか?」

「いや、あの……大衆文学っていうかなんていうか……」
受付嬢
「うーん……あのー、大変申し訳ないんですけど、そういうのは編集者の方から、通さないでほしいと言われてまして……。よくお見えになるんですけど……」

「あ、そうすか……」
受付嬢
「申し訳ございません」

「原稿を渡してもらうっていうのは……」
受付嬢
「それも出来ませんね」

「あ、そうすか……
受付嬢
「そういうことなので……」

「……はい

 あっさりと妄想は吹き飛び、私は寂しく帰路に就いた。
 ちなみに、この時書いた30枚の短編小説のあらすじだが、アメリカ大統領とソビエトの書記長が会談中、なぜか米ソ核戦争勃発。二人は核シェルターに避難し、お互いに悔い改める。そして外へ出てみると、銃を持った若者たちに囲まれていた、というものである。
 今書いてみて思ったが、全然面白くない。基本的に、30枚でこんな筋の小説を書くという自体が無謀だ。

 ……さて、それから現在。私は当時と比べれば、格段に成長したと思う。実際、もらうメールにも「あなたならプロでやれるから頑張って下さい」というようなものが多い。
 プロでやれる。素晴らしい響きだ。
 そういったありがたい言葉を受け、私は調子に乗って「9年前の屈辱を今晴らす!」との意気込みを持ち、再度、持ち込みを敢行することにした。
 今回は前回と違い、このホームページ上の山のような原稿がある。
 この原稿を見せて、少しでも才能を感じてもらえれば、なんかの雑誌でちょっとぐらいは書かせてもらえるかもしれない。
 相手は絞った。
 あの超大手出版社「文藝春秋」社である。

 こうして私は文藝春秋社にまず電話を入れた。
 しかし、この電話に出た編集者が、9年前の角川書店の受付嬢より、更に私に落胆をもたらすとは、かける前には思ってもいないことだった……。

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