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Dec 2, 2008
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第二十四回 週刊少年マガジン編集部 その1
「いやあ、いらっしゃい」
蒸し暑い六月の夕方。
Aさんが、いつものジャンパーにジーンズというラフな格好で私とKさんを出迎えてくれた。
講談社に入ることはもうだいぶ慣れてきたが、この日は週刊少年マガジン編集部を訪ねるということでそれなりに緊張していた。なにしろ、競馬漫画の傑作だと思う「風のシルフィード」、ブラックジャック以来面白かった医術漫画の「ドクターK」、今でも続くボクシング漫画「はじめの一歩」などを産み出している場所である。
私は、編集者さんに特攻(ぶっこみ)の拓はどうしてコマ毎に !? と出るんですかと聞きたい気もしていたが、あまり関係ないのでやっぱりやめておこうと考え直した。

↑特攻の拓 イメージ画
「えーと、金成さんはもう来ているんですか?」
「いや、なんか遅れているみたいでね、もうちょっとかかるらしいんだよ。ま、とりあえずコーヒーでもいれるから座ってよ」
Kさんの問いにAさんは軽く笑みを浮かべてそう言うと、早速、コーヒーメーカーのある所へと向かった。
「工藤君、金成さんへの質問の方なんだけど」
「あ、はい」
Kさんに言われて、リュックから紙を取り出す。
「とりあえずこんな感じで」
「……うん、いいんじゃないかな」
Kさんがそう言い終えたと同時に、Aさんが湯気の出た紙コップを二つ持って戻ってきた。
「ところで工藤君、プロットの方はどんな感じ? って言っても、この仕事が終わらないと出来ないか」
「そうですねー」
「まあ、よろしくお願いしますよ」
話の流れはいつものように、青い鳥文庫のプロットに関して、になった。
型破りな男が出てくるミステリー。私はこの時点ではそんな楽勝だ、という気がしていた。当時は型破りなキャラクターが好きだったし、めちゃくちゃな人間を書けばそれでいいだろうと単純に考えたからだ。
「なんだよ、今日来るとかいっていた代理教師、全然こねーじゃんかよ」
「初日から遅刻するなんてどうしようもねーな。ま、県下最悪と言われている俺たちの高校来る前にびびっちまったんじゃねえの?」
「……ん?」
「どうした?」
「なんかサイレンみたいの聞こえねぇ?」
「サイレン?」
「お、おい、あれ見ろよ!!」
「……まじで!?」
「消防車が校庭に突っ込んできたよ!!」
「いやー、わざわざ乗せてもらってどうもでした。お仕事頑張って下さい。よろしく、我が生徒諸君!」
こんな感じである。
だが、これを読んで皆さんは、(こんな奴いるわけないじゃん)と鼻で笑っただろう。そう、こんな奴はいるわけない。
破綻キャラを小説で読むのはかなり苦痛で、型破りと言ってもその理由を書かないと大抵の読者は引いてしまう。
例えば、彼は元消防士で出勤途中にぼやを見つけて消火、だが遅刻しそうになってしまい困っていたところ、やってきた消防車(同僚)が乗せてくれた、という理由を作っておけば(それはないだろう)と思いつつも、読者は(こいつは正義感があって、仲間からも慕われているんだなぁ)と考えてくれる、かもしれない。だが、なにもなければ、こんな奴いねえだろ、で終わりだ。
型破りキャラを書く上での注意点がもう一つある。彼らには新味がないということだ。
彼らの性格なんて「権威を真っ向から否定する」「世間一般の常識を無視する」と、これぐらいしかない。漫画に出てくるような、そういう性格の人間がやることなんてたかが知れている。よって、なんの理由もなく消防車に乗ってくるようなキャラを見ると、読者は(またこういうやつか)と思ってしまうわけである。
本当に型破りなキャラを書くなら、漫画で見たキャラを再生産するのではなく、上野公園にいる人から警察官から弁護士からサラリーマンから、とにかくいろんな人に会って話を聞くべきだろう。生きている人間の中に、必ず本当の意味で型破りな男がいるはずだ。
すっかり脱線してしまった。話を元に戻そう。
