「……」
スパークしたのは、魔法のグリデン解釈ではなく、私の甘い考えだった。
解釈の文章に「や」も「か」も全く入っていない。それに、わずかながらそれらの文字が入っている文章の解釈問題があったのだが、選択肢の解釈すべてが「疑問形」になっているのだ。これでは、魔法のグリデン解釈もくそもない。ようするに、単語の知識が問われているわけである。
必殺であるはずの「小学五年生」戦法もいとも簡単に破綻した。
選択肢すべてが、小学5年程度の語学力でわかる言葉、そして内容で書かれていたのである。
魔法にかかったのは、どうやら私の頭だったらしい。あの本一つで大学受験を突破出来ると、洗脳された私が馬鹿だった。
やっとのことで(2)を終えると、現代文が待っていた。現代文はまったく問題がない。得意中の得意である。
しかし、(4)。再び古文が出てきた。しつこい。
まあ、國學院大学というところは、古文で名を馳せている大学なので、古文に比重を置いた問題形式は当たり前と言えば、そうなのであるが……。
しかし、知恵熱でも出しそうな状態のこの時、そんなに冷静には考えられず、頼むから俺をこれ以上苦しめないでくれ、という状態だった。
そして漢文。
当然のようだが、問題文は矛盾の話でも五十歩百歩の話でもなかった。
そしてチャイム……。
「……」
私は半ば茫然としながら、試験官に答案用紙を渡した。
昼食を食べながら考え込む私。すべての問題に対して解答したものの、「これは絶対に合っている」と言える答えは、現代文のそれを除いて一つもない。
遠のく、夢のキャンパスライフ。そして白のラガーシャツ。教科書を巻くベルトみたいなやつ。そして手をつなぐ彼女。
(……こんなんで受かるのか? いや、大丈夫。小論文がある。小論文を面白く書きさえすればそれでいいんだ……それでいい……)
私の期待は、小論文一つに注がれた。
そして昼食の時間が終わり、とうとう小論文のテストの時間がやってきた。
配られた参考文章を見る。
(……なんだよこれ、意見の書きようねえじゃん)
文章の中で論理が見事に完結しており、これをもとにいろいろ書くのは、かなり難しいように思えた。
この文章はすっかり忘れてしまったのだが、ようは『人にとって愛は大切です。愛するという心、万歳!』という内容で書かれているような、肯定するにも否定するにも一言で済むような、どうにも論理展開のしようがないものであった。
私は悩んだが、全力でその文章に立ち向かった。
……チャイム。
(終わった……)
久しぶりに頭を使ったのでふらふらする。私は試験官に答案を渡し、ほっとしながら目を閉じて、手で顔を覆った。そして自分に言い聞かせた。
(よくやった。小論文は完璧だ。これで合格はもらった)
試験日から何日かたった後の土曜日。待ちに待った合格発表の日がやってきた。実際に大学へ行ってボードを見ようかとも思ったが、郵便で合否の通知が来ることがわかっていたため、朝からそわそわしながら郵便が来るのを待った。
合格しているなら、大きな封筒が来るはずだ。玄関の郵便受けに、大きな封筒をごそごそと入れている音が聞こえれば、それは私の合格を意味する。
そしてあっという間に、郵便屋さんの来る昼になった。
-ドンドンドン-
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