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 ネット発の連続殺人事件が巻き起こす騒動
 ネット上で加熱する謎解きとプライバシー流出

掲示板
 現場は混乱している――記者の質問に応じた、県警のある幹部は苦々しい表情でそう語った。メーリングリストと呼ばれる、メールを媒体として構成されているグループ内の連続殺人事件。インターネット上にある匿名掲示板にはメーリングリストの参加者の名前、被害者の個人情報、関係者のサイトのアドレスが書き込まれ、“犯人捜し”は異常な過熱ぶりを見せている。







【ネットの壁】

「個人的なトラブルならこれまでもよくあった。しかし、連続殺人事件となると前例がない」

 捜査関係者がそう語るとおり、ネットではストーカー被害や「掲示板荒らし」と呼ばれる中傷といった、比較的小さい犯罪が目立っていた。しかし、今回の事件はメーリングリストと呼ばれるグループ内で既に複数の人間が殺害されている。匿名掲示板では犯人がメーリングリスト内で送りつけたとされる「殺人予告メール」も掲載されており、犯人と名乗る人間が動機や殺害状況を書き込むなど、事件は異様な展開を見せている。

「掲示板に書き込まれた予告状や犯人のものとされる書き込みは、おそらく、誰かが面白半分に書いた偽物でしょう。しかし、それをそうだと言い切れないのは、発信元を記録しない匿名掲示板だからです。事件に関係するスレッドの書き込みは膨大な数に達しており、一つ一つの発信者を突き止めるのは不可能。仮に接続元の情報が判明したとしても、インターネット喫茶のような、身分証明なしでネットにつなげる場所から書き込まれたものだったらどうしようもない。警察はネットの壁にぶつかっているでしょう」

 インターネットに詳しいフリーライター、町田宗和氏はこう語る。

【メーリングリストとは】

 連続殺人事件の舞台となっているメーリングリストとは、どういうものなのだろうか。

「メールとは普通一対一のやりとりで使われるものですが、メーリングリストとはある特定の話題をするために、皆がメールアドレスを登録し、一人がメールを送ればそれが全員に届くようになっているというシステムのことです。BBSと呼ばれる掲示板と似ていますが、掲示板は不特定多数の人間が閲覧、書き込みが出来るので、どこの誰ともわからない人間に悪戯されることがあり、その点で最初にメールアドレスを登録するメーリングリストの方が議論をするのに向いていますね(町田氏)」

 では、犯人はメーリングリストの関係者であり、一人一人当たっていけば逮捕は時間の問題と思われるが……。

「警察も当然、メーリングリストに加入している人間のことは調べていると思います。ただ、第三者の犯行という線も捨てきれない。また、ネット上では一人の人間が複数の人間になりすますことが可能であり、メーリングリストの人間も全員把握出来ていない可能性もあります。前出のインターネット喫茶のような場所から犯人がメールを書いているとしたら、個人の特定は困難でしょう(町田氏)」

【動機は?】

 2人の人間を殺害するには、相応な動機があると見るのが妥当だが、警察は絞りきれていないようだ。被害者に共通しているのは同じメーリングリストに所属していたということ。いったいメーリングリスト内で何があったのか。感情のもつれか金銭トラブルか。それとも別の何かがあるのか。捜査員の一人は、「動機を解明することが解決への近道」と語る。存在が噂される“殺人予告メール”を含め、ネット独特の価値観を踏まえ、捜査していくことが解決の重要なポイントとなるだろう。

2000/12/14



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