2010-8-04 Wednesday

穏やかな気持ちで長くサイトを続けるための三つの約束事

 サイト運営をある程度やっていると、更新ペースとか内容とか自分基準の約束事を作るようになる。私の場合、最初の頃に作ったのは、

  • 毎日更新
  • シリアスな文章を続けない
  • 自慢する内容のときは自虐で落とす

 などで、サイト運営が行き詰まってくると「毎日更新なんて無理だ、もう楽しいことなんて書けない、これから俺は自由になるんだ、だから俺は約束事なんて絶対決めないぞ」と、約束事を作らないという約束事を作ったりもしたが、低空飛行が安定してきた今は、この手のものは座右の銘とか家訓なんかと違って状況に合わせて柔軟に変えていけばいいんじゃないかなと思い、過去の失敗から得た教訓を現在の自分のテーマである『長く安定してサイトを運営していくために穏やかな気持ちで居続ける』に合わせて約束事にし、それらを頭に入れながらキー叩いている。
 これからサイトを作ろうという人の参考になるかもしれないので紹介したいが、細かいものを入れると数十ぐらいあるので、常に頭に置いてある三つを書いていきたい。

エキセントリックなことは書かない

Photo by:vidrio

 以前、『自サイトに思い入れが強く、費やしている時間が長い運営者が嵌るかもしれない罠』でも書いたが、サイトを運営していると承認欲求がうまく満たされない状態のストレスなどで、飛行機がエアポケットにはまるかのように、突然どうしようもない孤独感を抱くことがある。大抵、夜中だ。
 そんなとき、深夜に異様にテンションが上がり、思っていることをすべて吐き出したくなるいわゆる“真夜中のラブレター現象”と相まって、エキセントリックなことを書いて人目を惹きたくなる。たとえば、

  • 過激な願望、欲求
  • 常識の否定
  • 一方的な(あるいは誤解に基づく)攻撃

 辺りになる。
 攻撃はともかく、他の二つは「みんなが納得できるようなオチを付けられる」「論理的に破綻していない」のであれば読み物として評価されるかもれない。しかし、こういうことを書き慣れていない人間が真夜中のラブレター現象のせいで書く衝動を抑えられなくなってくると、全部ぶちまけてすっきりしたいということしかなくなるので、間違いなくいいっぱなしで論理的に破綻している内容になり、非常に危険である。
 落ち着いて考えればすぐに気づきそうなことだが、わざわざ自戒しなければならないのはまったく見えなくなってしまうからだ。自分の経験からいうと、書いている途中、「これを書きさえすれば自分を取り巻く世界がすべて変わる」ぐらいの病的な高揚感を得られる場合がある。こんな感覚を得られることは少ないので、書き終えたときの「ついに書いてやった」という達成感もものすごい。
 だが文章をアップして眠って起きて待っているのは「まずいことを書いてしまった」という後悔と、その後悔が正しいことを証明する非難の山だ。

詳しくないものを材料にして自分を語らない

Photo by:Valentin.Ottone

 アクセスが増えてくると、サイトや記事だけではなく自分自身も見られている感覚が出てくる。サイト運営のモチベーションとして自己顕示欲が満たされるためというのはやはりあるので、自分が注目されるのを嬉しく思う人は多いだろう。他人事みたいに書いているが私もそうだ。
 ただ、自分を見てほしいという意識が先行してしまうと、本来、注目される要因となったコンテンツをないがしろにしてしまい、自分語りに集中してしまうということが往々にしてある。「おまえがその典型だろう」といわれると返す言葉がないが、サイト運営はまず自分のモチベーションありきだから更新スタイルを受け入れられない人が離れていくのは仕方がない。注意すべきなのは対人トラブルの元になるケースがあるということだ。
 自分語りを行うには材料が必要になる。その材料が自分に近しいものであるうちはいいが、話が尽きてくればいずれは守備範囲外だけど話題のニュースなどに求めることになる。トラブルを起こしたと話題になっている企業について出所不明の噂と印象のみで語る、あるいは、事件を起こしたよく知らない有名人についてネットで見かけた言説を元に語る、つまり、「よく知らないことを訳知り顔で語りながら自己宣伝を行う」ことになる。この言動がもたらす危険性は想像できると思う。
 モチベーションを上げる一環として自分語りを行っているのに、それがきっかけでトラブルになってモチベーションを失ってしまっては本末転倒だ。

ピークの状態で思いついた真理を語らない

Photo by:chaysbc

 すっかり枯れている当サイトにも一応ピークというものがあり、『ZEROの法則』を擁して雑誌に紹介されまくった2000年前後がその時期だったと思う。メディアからのインタビューなども結構あって人気サイトの運営の秘けつみたいのを得意気になって喋ったが、今振り返ると、「それはあり得ない」ということも含まれていた。間違いなく口にした記憶があり、今はあり得ないと思っていることの一つに、

「個人サイトを成功させたければ、更新はプライベートの時間を削って毎日行うべき」

 というのがある。
 一面では確かにそうで、だからうちも人が集まってきたのだろうが、今はこの発言の内容に全面的に同意できる部分はない。いうなれば、マラソンで勝ちたければスタートから行けるところまで全力疾走しろといっているような内容であり、そういう走者が最後どうなるかは説明するまでもない。ただ、当時は本当にこう考えていたし、個人サイトを成功させるための絶対条件だと信じていた。その成功が短期間で終わる可能性が高いと気づかないのがピーク時に物を語る怖さだろう。
 もう一つ、ピークの状態で思いついた真理を語るなというのは、なにも語った自分が後年みじめな思いをする可能性が高いからということだけではない。誰かを間違った方向に導いてしまうリスクとそれに付随するトラブルを回避できるからだ。

最後に

 上記の約束事の逆を行くと人間的な魅力をアピールできる可能性もある。私もたまにエキセントリックなことを書く人には人間味を感じる。ただ、支持してくれる人は多いが反感を持つ人も多いという状態を十年も二十年も続けながらサイトを運営できるかどうか。穏やかな気持ちにならなくても長期運営が可能だというなら、約束事の逆を選択した方が刺激のある生活を送れそうだが私はやはり難しいと思う。

 とはいえ、このコラムに書かれている約束事もある意味で安定という名の『ピークの状態で思いついた真理』である。長期運営の条件として正しいのか間違っているのか、証明してくれるのはやはり未来ということになりそうだ。

posted by kudok @   | Permalink

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