2012-5-20 Sunday

今更、虚構新聞の話 -はてなでもっとも強く虚構新聞に異を唱えている人たちとは-

 私はツイッターでフォローしている人が書き込んだURLをクリックすることがあまりないというか、そもそも自分が書き込む時にしか開いていないので、ツイッター経由で虚構新聞にアクセスしたということはない。アクセスするのは、いつもはてなブックマークを経由してだが、はてなブックマークは記事元のドメインが表示されるので、始めからこの記事は虚構新聞のものだなとわかってアクセスしている。
 なので、初見で『橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化』というタイトルと短縮URLがツイッターのタイムラインに流れてきたら、どういう気持ちになってどうするかというのはわからないのだが、ついさっき、虚構新聞関連のトゥギャッターのまとめを見ていたら、本物の通信社の記事かと思ってクリックしてしまうかもしれないなと思った。

 たとえば、なにかのインタビューや講演で橋下市長が、

 今の小中学校のインターネット教育というのは、Yahoo!にアクセスしてみよう、ホームページを作ってみようというところで終わることがほとんどだと思います。でも、もっと踏み込んで、時代に沿った形でしっかり教えた方がいいと思うんですよね。そういう意味では将来的に、小中学生全員にツイッターのアカウントを持ってもらうというのも面白いかもしれませんね。

 みたいなことを語ったとする。“面白いかもしれない”というのは、基本的に、“アイデアとしては面白いけど非現実的なので実行する気はない”の略である。しかし、どこかのニュースサイトがそれをわかって『橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化』という見出しで、このインタビューにリンクしてもそんなに変ではない気がする。勿論、PVを獲得するためだ。
 で、こっちはそういう構図を思い描いて、元記事ではどういう風なことになっているんだろうと確認したいという欲求が湧いてくると思う。簡単に言うと、

橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化

 は最初から事実ではないとわかるが、

その見出しが付くきっかけとなったインタビューや講演

 の記事を読みたいのでクリックするということである。
 ネットメディアが増えて、あり得ないタイトルの先に本物の記事がある可能性を高く見積もるようになってきたというのが、確認欲求を実行に移す要因の一つだろう。

 上記の目的で短縮URLをクリックする人からすると、虚構新聞のサイトに『虚構』という文字が入っているとか、タイトルを反転すると「これは嘘ニュースです」と書いてあるということはそれほど意味がない。タイトルを始めから真に受けていないので、クリックしたら虚構新聞で、「やられたー」と苦笑いして自分の額を指の先で叩くということもほとんどなさそうだ。

 誤認があるかもしれないが、とりあえずはてな界隈で虚構新聞にもっとも強く異を唱えている……というか、タイトルにサイト名を入れてくれと考えているのは、タイトルだけ、特に実在のものを連想させる名前が入っている場合だと、あり得ないとわかっていても(インタビューや講演を聞いた第三者がいかようにもタイトルをつけられるため)元記事が虚構新聞なのか、それとも通信社の記事なのか判別つかないので面倒だと思っている人たちだろう。「内容については特に言うことはない、ただ、自分は本物の記事だけを読みたいんだ、だからサイト名を入れてくれ」と俯いている光景が目に浮かぶ。
 顔が真っ赤になっているかどうかはわからないが、本物の記事があると思ってクリックしたのであれば騙されたと言える。しかし、タイトルを見て「それは大変だ!」と反射的に思ってURLをクリックした先に虚構新聞の記事があった時の気持ちと、「おかしなタイトルなので記事元を確認しよう」と思ってクリックした先に虚構新聞の記事があった時の気持ちには違いがあるのではないだろうか。
 前者はいわゆる釣られた状態で、いやー、まいったまいったという気になって、虚構新聞の運営者さんはしてやったりという流れが見えるが、後者は作業中にノイズを拾ってしまったような気になるのでは。サイトを見ることは遊びという人と、サイトを見ることは作業という人の感覚の違いと言えるかもしれない。

虚構新聞デジタル:「書店にレモン仕掛けた」 京都、6800人が避難
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 は、実在する人物の名前と写真を掲載して嘘の記事を書くのはまぎらわしいのではといった、内容に異を唱えている人向けの答えにはなっているが、本物の記事だけを読みたいからタイトルで判断させてほしいという意見とは噛み合っていない。
虚構新聞デジタル:ニュース特集:検証:橋下市長ツイッター義務化報道問題』に、タイトルにサイト名を入れるのは興ざめではないかという考えが書かれているが、昨今のネットメディアの状況から、タイトルはでたらめだと判断できても、その先には元になった本物の記事があるのではと誤認しやすくなってきたという問題の解決案はない。
 この二つの記事は、ニュースとして紹介されているタイトルの先には(タイトルとはかけ離れている内容であっても)本物の記事が存在しているという前提で機械的にチェックする人には向けられていない。
 はてな界隈から、未だいろいろとくすぶっている感じを受けるのは、多分そのせいだろう。

posted by kudok @   | Permalink

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