すべての食べ物が(おそらく)誰かにとっては嫌われているように、気にならない人にはなんでもない言葉だが、気になる人には避けて通りたくなる言葉というのがあると思う。
たとえば、発言小町界隈でよく挙げられている印象があるのは、
というものである。過去の過ちを、「まあ、そういうこともありましたけど、昔のことですから」と言う相談者に対して、
みたいにつっこんでいる人をちょくちょく見る。個人的に、やんちゃしていた人から直接的な迷惑を受けたことがないので、この言葉に対するネガティブな印象はほとんどないが、やや癖のある言葉だとは思うので、駄目な人はいるだろうなというのはわかる。
「やんちゃしていて」よりも癖がない言葉、日本語としておかしいと言えない、一般的に使われている言葉にも、拒否反応を示す人がいるだろう。こういったものは、使っている人に物申せず、苦手なんだけど黙って聞くしかない。仮にステルスNGワードとでも言おうか。
私の場合、「べろんべろん(に酔っ払う)」と「おばか」という言葉が駄目だった。今は大して苦手ではないのだが、昔は、好きな芸能人がトーク番組に出ていて、
「この間、友達とお酒を飲んで、べろんべろんに酔っ払っちゃったんですよ。それで――」
と、ステルスNGワードが出た途端、『クレイジークライマー』で順調にビルを上っていたプレイヤーが、植木鉢を落とされ、落下するかのごとく、上昇一途だった好感度が急落した。
先ほど、コンビニにスニッカーズを買いに行くがてら、なぜ、自分にとってはこの二つの言葉が駄目だったんだろうと考えてみたのだが、
- 酔った自慢に聞こえる(私はあまり酔わない方)?
- その後に語られる、泥酔した状態での武勇伝が大抵あんまり面白くない
- べろんべろんと口にする人に共通する、両手をくねくねさせる動作が苦手?
おばか
- 人や動物など、自分以外の誰かに対して言うことが多く、上から目線に思える(上から目線で物を言われた経験が多いので苦手?)
だいたい、こんなところかなと思う。
多分、「それのなにが駄目なの?」とつっこんでくる人がほとんどだろうが、往々にして感覚的な話になりがちな、世間一般では普通に食べられている物を嫌いな理由を説明するときのように、とにかく、なんか苦手としか返しようがない。
で、最近特に苦手なのが、
「がっつり」
である。幸いにしてというか、私は人付き合いが皆無に近いので、好感を抱いている人から直接、この言葉を聞いたという経験がない。ただ、好きな芸能人がトーク番組で口にしたのを聞いた経験は何度もあり、そのたびに、昔よりは精神的に成熟してきたので、好感度を下げるのではなく聞かなかったことにしている。
なぜ駄目なのか。やはり、コンビニに行く途中で考えてみたが、どうもこれといったものがない。
一応、
というのが浮かんできたが、そうなのかはわからない。
検索してみると、もともとは北海道の方言とあるが、北海道の女性が口にしたら気にならないのだろうか。その辺もよくわからない。
文章の前の方でも書いたが、こういった、自分は苦手だが世間一般では普通に受け入れられている言葉を言われた場合、人はあくまでも心の中で拒否反応を示すだけで、相手に対して直接、なにかを言うことはないだろう。
私も、「がっつりとラーメンを食べてさ」と女性が言ってきたとしても、「俺との会話ではがっつりという言葉は使わないでほしい」とはとても言えない。その要望を正しいとする根拠がなく、自分の方がマイノリティ(がっつりという言葉が苦手派)だとわかっているからだ。
同じように、私が口にするステルスNGワードを聞いて、あるいは私が書いたステルスNGワードを読んで、私の話し相手だったり、私の文章を読む人は、なにも言うことなく、私に対しての評価を急落させているのだろう。
面と向かって指摘されることなく、面と向かって指摘出来ず、好感度を下げられ、好感度が下がってしまうステルスNGワード。
あなたのステルスNGワードはなんですか?
(なんですか? は文章の終わりで使うと上から目線が際立つので、誰かにとってのステルスNGワードになる気がする……)