最近、うちのサイトを見つけた人は、ここを「XOOPSでできた放置サイト」と認識していると思う。だが昔はそうではなかった。XOOPSではなかったというよりも、XOOPSでサイトを構築するスキルなどまったくない、ホームページビルダーでしかサイトを作ることができない運営者(私)によって作られた静的サイトだった(ついでに書くと放置もしてなかった)。
以前の私は、スタイルシート(CSS)と聞いても、本物の紙が頭に思い浮かぶような状態で、HTMLを自分で書くことなんてことはまったくできなくて、オチの所ではホームページビルダーのフォント拡大ボタンを魂込めて連打し、<font-size="+6″><b>ここ、笑いどころ!</b></font>、これで満足していた。よく、サイト作成講座を批判するようなサイトに「<h1>は文字を拡大という意味ではない」なんてことが書いてあるが、私はホームページビルダーでソースを見るということが皆無に近かったので、<h1>と書くと文字が大きくなるということすら知らなかった。
今では一応、怪しげなXHTML1.0 Strictで(メールフレンドと恋愛用語辞典は違うだろって? 確かに。メルフレはページ数が多くて作業中、フレームを使った恋愛用語辞典はもうどうしていいのかわからない・笑。いいアイデアがあったら教えてください)書いていて、サイト作成のためにCGIやPHPというプログラムを使うことに躊躇することはない。
どうしてそんなに変わったのかといえば、それは「赤の他人に嘲笑された」ことがきっかけである
もう5年か6年ぐらい前のことだ。当時のうちのサイトには『文章系ホームページ改善組合』というコンテンツがあった。これは、ある程度のアクセス数を得ていた私が変に自信を持ち、「人に読んでもらうサイトにするにはこうしたらいい」というノウハウをネタっぽく、はっきりいえば「こんな感じのサイトは駄目だからこうしろ」と上から目線で書いたものだった。まあ、不評か好評かといえば、どちらかといえば好評であり、参考にしたいという意見も結構もらった。
ある回において、「ブラウザいっぱいに文章を展開するのはやめよう」というようなノウハウを書いた。ようするに、文字を隙間なくびっちり敷き詰めると見にくいよということである。
私自身はCENTERで挟んだテーブルの中に文章を流し込み、なおかつ、36文字程度で改行するという方法でこのノウハウを実践していた。左右のマージンを設定してどうのこうのなんて考えもつかなかった。スタイルシートをまったく知らなかったからだ。
当然、この方法を採ると解像度やブラウザの幅によって意図しない場所で改行されてしまうという問題が生じる。
もしもしかめよかめさんよ<br>
せかいのうちでおまえほど<br>
あゆみののろいものはない<br>
↓
もしもしかめよかめ
さんよ<br>
せかいのうちでおま
えほど<br>
あゆみののろいもの
はない<br>
だが、当時の私は他人の環境を考えることがなく、漠然と、みんなも自分と同じような環境(たとえば解像度は800×600)でサイトを見ているんだろうなと思っていて、改行を入れることによって表示が意図しないものになるという考えはまったくなかった。
ある日、私はエゴサーチにてこのような感じの日記を見つけた。
○○さんから「文章系ホームページ改善組合」というのを教えてもらう。
ブラウザの幅いっぱい
に<br>
文字を広げるのはやめ
よ<br>
う<br>なるほど。参考になりますね(棒読み)。
括弧棒読みでわかるように、彼は本当に参考になったと書いているわけではない。改善組合のソースを見て揶揄したのだ。
今であれば、そういう指摘を目にしたら「あ」と思って普通に直すだろうが、当時は若くて血気盛んな上に、あちこちの雑誌に掲載され、様々なメディアに紹介され、感想のメールが毎日何通も届くという状況で自信が膨れ上がっていた頃だったので、ただただ腹が立った。自分の中の言い回しむかつきランキングで「括弧棒読み」という言い回しが「括弧苦笑」についで第二位ぐらいに(今でも)位置していたので、余計に頭に血が上った。
なにか言ってやりたい。HTMLの知識ではかないそうにないから、彼の文章の間違いを見つけて「おまえだって間違ってんじゃん」と心の中で笑ってやりたい――ようするに、そうすることで駄目な人に突っ込まれただけ。事故のようなものと自分を慰めたかった――と思い、彼の日記を読み始めたが、本当に日記というか、どこそこへ行った、誰と会った、なにを食べたという日常の記録がほとんどで突っ込みのしようがなく、誤字脱字すら見つけることができなかった。彼の言っていることが100%正しいだけに、その隙のなさ、完璧さが更に私の怒りを煽った。俗っぽく書くなら、「くやし~~~~っ」という状態である。
だが、深く読み込んでいくと、彼が「ルールに則した正しいHTMLを書いている」ということに誇りを持っているということがわかった。
だったら、彼が書いているHTMLの間違いを見つけてやろう。そして、「おまえだって間違ってんじゃん」と突っ込んでやろう。そうすれば俺の心はきっと晴れる。今振り返ると、「おまえ小さいよ。小さすぎるよ」と懇懇と説教したくなるが、その小ささが幸いしたというか、「俺はHTMLのことをまったく知らない。だから、彼の間違いを見つけるためには自分がHTMLを覚えるしかない。そして突っ込むためには、まず自分のサイトのソースを完璧にしてからじゃないと意味がない」ということで、HTMLの勉強を始めた。
私がこのサイトをXHTML1.0 Strictで書くに至ったきっかけは、W3Cの理念がどうとか、アクセシビリティがどうとか、HTMLを正しく書きたいとかそんな高尚なものではない。ただ、自分を笑った人間を笑ってやりたい、それだけだったのだ。
あれから5年か6年が経ち、私はHTMLのソースとスタイルシートを見れば、どうレンダリングされるのかだいたいわかるというぐらいの知識は得た。ホームページビルダーを起動することは滅多になくなり、普段はエディタでサイトを作っている。
正直いうと、私は未だに仕様書を読んだことがないし、XHTML1.0 Strictといっても、突っ込みどころは腐るほどあるというのは自覚している。道半ばどころか、道を走り始めたばかりといえるだろう。でも、「自分を笑った人間を笑い返したい」などという情けない理由で始めたHTMLの勉強によって、私のHTMLの知識も、このサイトのソースも劇的に向上した。
括弧棒読みの人のことを今はどう思っているのかと聞かれたら、もうただただ感謝の気持ちしかないといえる。嫌味はまったくない。純粋に感謝の念だけだ。
彼がこのサイトを訪れたのは、きっとあの日記を書いたときが最初で最後であり、今後も訪れることはまずないだろう。おそらく、このサイトの存在、及び、『テキスト王』というサイトの『文章系ホームページ改善組合』というおかしなコンテンツに突っ込んだということをまったく覚えていないと思う。私も5年も6年も前に、どのサイトに言及したのかなんてまったく覚えていないし。
だからここでお礼を言いたい。
あなたが私を笑ってくれたことで、私は新たな知識を身につけることができて、世界を大きく広げることができた。
きっかけをくれてありがとう。
実はXOOPSでサイトを構築したきっかけも似たようなものなのだが、それはまた別の機会に。