第13回 俺は田原総一朗 ~美少女コンテスト審査員編~
サイト掲載日 1999年3月3日 実験小説
審査員
「なるほどね、憧れている歌手はセリーヌ・ディオン。うんうん。えーと、それじゃちょっと基本的な質問しちゃいますけど、今回のコンテストに参加した動機ってなんでしょうか?」
女
「あ、はい、あの、実は弟が勝手に応募しちゃったみたいで、それでです」
審査員
「なるほど、弟さんが。いきなりだけど、あなた、可愛らしい顔してますよね」
女
「えー、そんなことないです」
審査員
「自分のこと可愛いとは思わない?」
女
「そんなこと思わないですよー」
審査員
「ははは、そうか。それじゃ、僕の質問はこれで」
司会
「はい、ありがとうございました。えー、続きまして田原総一朗さん、お願いします」
田原
「はい。えーと、早速なんですけど1つ、いや2つお聞きしたい。まずあなた、弟が勝手に応募したとおっしゃった」
女
「はぁ」
田原
「弟さんが勝手に応募する理由ってなんなんですか?」
女
「いや……なんなんですかって言われてもちょっと……」
田原
「ちょっとってなんですか。ちょっとわからない? あ、そう。じゃあ、もっと突っ込んでお聞きします。オーディションに応募するということは悪いことでもなんでもないわけで、弟さんがあなたに無断で応募する理由がまったく見えてこない。正直な話、あなた、本当は自分で応募したんじゃないですか?」
女
「いや……それは……」
田原
「それはなんですか」
女
「っていうか、弟が無断で……」
田原
「だから、なぜあなたに無断で応募したんですか」
女
「いや、それはちょっとわかりません」
田原
「まあ、とりあえずこの質問は置いときましょう。2つめの質問、えーと、仮に弟さんが勝手に応募したとして、あなたは拒むことなくコンテストに参加することにした。これはなぜですか」
女
「え、いや……」
田原
「はっきり言うと、あなたは自分のことを可愛いと思っている。自分の容姿に自信がある、そうなんじゃないですか?」
女
「え、そんなことないです……」
田原
「自分のこと可愛いと思わないで、なんでここに来たんですか」
女
「いや、それは……」
田原
「あなたは、それなりの勝算、ようは自分は他の女と比べて可愛いと思っている。だからではないんですか」
女
「っていうか……」
田原
「あなたのおっしゃってることと、行動が明らかに矛盾しているんですよ。はっきり言って、わかりにくい。もう、そんな弟が勝手に応募したとか、自分のことは可愛いと思わないだとか、そういういい加減なことは言うのやめて、ほんとのこと話しませんか」
女
「はぁ……」
田原
「それじゃ改めてお尋ねします。今回のオーディションに参加しようと思った理由はなんですか」
女
「いや……」
田原
「あなたがほんとのことおっしゃらないなら、もう一度私が代わりに言いましょうか。あなたは自分のことを可愛いと思っている」
女
「……まぁ……えっと、えー……」
田原
「思ってるんですね」
女
「っていうか……」
田原
「何回でも言います。あなたは自分のことを可愛いと思ってる」
女
「うーんと……」
田原
「可愛いと思っている」
女
「まぁ……はぁ……」
田原
「あなたは自分のことを可愛いと思っている」
女
「はぁ」
田原
「だからコンテストに参加した」
女
「……まぁ……そうかも」
田原
「でも、自分のことを可愛いと言うと、反感買うと思って可愛くないと謙遜した。つまりあなた、我々に嘘ついたことになる」
女
「まぁ……はっきり言うと……そんな感じっていうか……」
田原
「わかりました。あなたは我々を誤魔化すために謙遜してみせたが、実は心の底で自分のことを可愛いと思っているんですね」
女
「はぁ」
田原
「……あ、もう時間ですか。それじゃ紳助さんにお返しします」
-完-