身の回りの出来事系エッセイ-24 勧誘電話 2
1997年12月16日執筆
勧誘電話。それは大抵むかつく。顔を合わせないからだろうが、向こうは言いたい放題だ。実際、面と向かって話したら、電話で言っていることの10分の1も言えないだろう。
さて実例として、最初に『マルチ商法勧誘電話』を挙げよう。
これは高校の人間から、私が20歳ぐらいの時にかかってきたのだが、友達でもないのに妙に馴れ馴れしい態度で私をむかつかせた。後で確認したところ、彼は理系進学クラスに在籍していたことが判明。そして、高校の同級生のみんなで飲んだとき、同学年全員の家に電話しているという事実も確認。ほんと、暇な奴だ。
トゥルルルルル トゥルルルルル……
私
「はい、工藤ですけど」
マルチ
「あ、小林(仮名)です!」
私
「小林?」
マルチ
「小林ですよ! 覚えてますか!?」
私
「え、誰?」
マルチ
「高校の時、隣のクラスだったんですけど、覚えてないかな?」
私
「隣のクラス?」←ちなみに私はC組である
マルチ
「廊下とかで会った記憶もあるんですけどね」
私
「俺は全然覚えてないね。……それでなんか用?」
マルチ
「今度、喫茶店でコーヒー飲みに行きませんか?」
私
「誰と?」
マルチ
「僕と」
私
「なんで?」
マルチ
「お話ししたいことがあるんです」
私
「俺は多分、君と話すことはないと思うよ」
マルチ
「まあ、そう言わないで。明日なんかどうです?」
私
「明日って?」
マルチ
「喫茶店に行くの。凄い美味しいんですよ、コーヒー」
私
「一人で飲んだら」
マルチ
「コーヒー嫌いですか(笑)?」
私
「好きだよ」
マルチ
「何が好きですか?」
私
「ネスカフェとか」
マルチ
「ははは、ネスカフェよりも美味しいコーヒーを飲ませてあげますよ」
私
「男と飲んでも美味しくないね」
マルチ
「じゃあ、女の子連れていきます!」
私
「連れてきてどうすんの?」
マルチ
「一緒にコーヒー飲むんですよ」
私
「へぇ」
マルチ
「……なんでそんなに態度が冷たいんですか?(笑)」
ここまでは面白いから付き合っていたのだが、いい加減めんどくさくなってきたので、私はとっておきの一言を云った。実は彼から電話がかかってくる以前に、高校の友人から『変な奴から、マルチ商法の勧誘の電話がかかってくるだろうから、気をつけるように』という連絡網が回ってきていたのである。
私
「だって君、マルチ商法の勧誘してんだろ?」
マルチ
「え……あ……えっと……」
私
「有名だよ、結構」
マルチ
「……一緒にやる気はないですか?」
私
「全然ないね」
マルチ
「……あ、はい……わかりました。それじゃ……」
ツーツーツーツーツー……
それから、幸いにしてマルチ商法の勧誘はない。友人から、「おまえだったら、相手を正論でやり込めて笑いモノに出来るだろうから、向こうの誘いにわざと乗ってちょっとこらしめてくれ」とよく言われるのだが、実際その場に行ったらどうなるかわからないので、一切関わらないようにしている。
そして次の迷惑勧誘電話は、前と同じく、20歳ぐらいの時にかかってきた、英会話とワープロの教材セットの勧誘電話である。
トゥルルルルル トゥルルルルル……
私
「はい、もしもし工藤ですけど」
女
「あ、わたし、伊藤(仮名)と申しますけど圭さんいらっしゃいますか?」
私
「僕ですけど」
女
「あ、圭さんですか?」
私
「はあ」
女
「圭さんは、英会話とかワープロとかに興味はおありですか?」
私
「特にないですね」
女
「でも、英会話は海外旅行に行くときには絶対必要ですし、ワープロの技術も社会人になったら絶対必要な技能ですよ」
私
「あ、でも僕、ワープロも出来るし、英語も出来るんで(と言っても英検3級(笑))」
女
「その能力をもっと高めようとは思いませんか?」
私
「いや、特に思いませんね」
女
「あー、そうですか……。実はこのたび、英会話とワープロの教材のご案内をするためにお電話差し上げたんですけども」
私
「はあ」
女
「これからわたしとお会いしませんか?」
私
「え?」
女
「喫茶店でお食事でもしながらお話したいんですけど」
私
「いやー、別に話すことないし」
女
「そんなことないですよ(笑)。ね、お話しましょう」
私
「いやー、結構です、すいません」
普通の勧誘電話だったら、ここで素直に切るところだろうが、この女はもの凄いことを言った。
女
「え、どうして!? 女の人と話せるチャンスなんですよ!?」
これはどういうところから出てくる発言なのだろうか。多分、高校の名簿を見て電話してるんだろうが(私の出身高校は男子校)、それにしてもこの女、凄い自信だ。
私
「はぁ?」
女
「このチャンスを逃すと後悔されますよ」
私
「別にしないと思いますけど」
女
「ほんとにわたしと会わなくていいんですか?」
私
「別に構いません」
女
「一緒に食事出来るんですよ!?」
私
「いや、別に出来なくていいし」
女
「後悔すると思うんですけど」
私
「いや、しないと思いますよ」
女
「私の顔、知らないじゃないですか」
私
「いや、あなたの話を聞いているとだいたいわかります。それじゃさようなら」
ツーツーツーツーツー……
多分女子大生のバイトかなんかだろうが、よくここまで言うと感心する。恐らく、会うにしたって本人は来ないで男が2人ぐらい来るんだろう。実際問題、こんなバイトやって恥ずかしくないんだろうか? 金のためとは言え、ここまで落ちぶれたくないものである。