身の回りの出来事系エッセイ-37 大きなお世話

1998年7月27日執筆


 作家志望者を含むクリエイター志望の人間は、久々に会った友人などが発する「今、何やってんの?」が一番つらい。どうして、こういうことを平気で聞くことが出来るのだろうか。
 はっきりと、「そんなの大きなお世話だろ。おまえに関係あんのかよ、えっ?」ぐらいは言いたいが、そうもいかないので、「あ? 今? おまえと話してる」などと答え、好奇心にかられた相手の質問を逆に増加させることはよくあることだ。
 それで仕方なく、「まあ、あそこでバイトしてるよ」と正直に答えると、相手はかさにかかったように、
「へぇ、時給いくら? 850円? それじゃ一日6000円超えるぐらいか。俺、今、中古車の販売とかやってんだけど、月30万ぐらいもらってるよ、うん。でもさ、この年になってバイトなんて、親とかなんか言ってねぇ? だってきついべ、一日6000円じゃさ。保険も国民年金だろ? 国民年金って今いくらだっけ。1万超えんのか。そこから家に入れたり、食費払ったりすると、金なんてほとんど残んないだろ。俺の場合、厚生年金とか引かれても結構残るからな」

(ああ、わかったわかりました。この年齢でアルバイトしていてすいませんでした。あなたは凄いね。月30万。おめでとう、今の調子で頑張って幸せな家庭を築いて下さい。それじゃさようなら)

 そう謝ってさっさと帰りたいのだが、こういう人間はなかなか帰してくれない。金がないと言っているのにもかかわらず、この後、無理矢理ファミレスなどに誘ってくれたりする。しかも場所はガストじゃなくて、すかいらーくガーデンだ。

 しかし、最近になって、ようやく「今、何やってんの?」と言われても動じなくなってきた。とりあえず、「本を出した。この後も出す予定がある」と言えるからだ。私が今、一番嬉しいのはそこである。
 以前、いつもここに出てくる例の彼女に、「ねぇ、言葉の暴力って知ってる? 身体に受けた傷はそのうち消えるけど、あなたの言葉で受けた、あたしの心の傷は一生消えないんだよ」などと延々文句を言われ続けて、逆に傷ついたことがあったが、

「今、何やってんの?」

 も、クリエイター志望にとって、「言葉の暴力」以外のなにものでもない。
 私がいまだに覚えているのは、一緒にバンドをやっていた知り合いの会社の同僚であるという、アロハシャツを着ていた女性(初対面)に、
「今、何やってんの?」
 と聞かれ、
「いや、バイトしているよ」
 と答えたら、

「ねぇ、いつまでそんな中途半端な生き方してんの?」

 と説教されたことだ。
 ほんと、大きなお世話だ。

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