ネット話系エッセイ-20 あの・・・
2003年6月4日執筆
個人サイトには掲示板、またはゲストブックが付きものである。管理するのが面倒などの理由で置いていない人もいるが、日本にある個人サイトの90%には掲示板、ゲストブックがあるのではないだろうか。
面白かったです、楽しかったですという有り難い言葉が並ぶ自分のサイトの掲示板、ゲストブックを覗くのは楽しい。だが、見たいようで見たくないような……という微妙な心理を抱いている人も結構いると思う。
その心理を生み出す原因は、やはり批判的な意見にあると思う。
代表的な批判的意見例(内容はフィクションです)
挑発型
テキスト王とか名乗りながら、更新は月に1回ですか。読点の打ち方もちょっと変ですよ。こんなんでプロの作家になれるんですね。世の中は広いからあなたのような人でも拾ってくれる人がいるんでしょうね。まあ、業界から消えないように頑張って下さい。
指摘型
貴方の文章系ホームページ改善組合を読みました。スタイルシートの勉強もされたらいかがでしょう。いまどきテーブルレイアウトで、これだけ偉そうにサイト作成術を説かれても失笑する人が多いでしょうね。また、ホームページというのはネットに繋いで最初に表示される場所のことであり、文章系ホームページ改善組合というタイトルは適切でないように思います。では。
抗議型
プロフィールにあるダンディ坂野氏の記述なんですけど、年に一回笑えるっていうことは残りは笑えないっていうことなんですか? プロのお笑い芸人さんに対して失礼だと思いますよ! あなたも、「工藤圭の小説は年に一回ぐらいなら読む気になる」なんて書かれたらいい気しないでしょう? 今すぐ訂正して下さい!! さもなくば、事務所の方に連絡して断固たる処置をとらせていただきます!!
オフラインで、上のようなことを面と向かって言われることはまずないと思う。もし、近所のスーパーで中学の後輩に「テキスト王とか名乗りながら、更新は月に1回ですか。読点の打ち方もちょっと変ですよ。こんなんでプロの作家になれるんですね。世の中は広いからあなたのような人でも拾ってくれる人がいるんでしょうね。まあ、業界から消えないように頑張って下さい」なんて言われたら、殴り合いの喧嘩になるだろう(笑)。
普通は言われないことを言われるのだから、どれだけポーカーフェイスの制作者でも、やはり批判というのは胃に来るはずだ。
見たいような見たくないようなと言っても、見たくないを選択するわけにはいかないので、とりあえず私は胃に来る衝撃を出来るだけやわらげるために、題名からある程度内容を予測することにしている。
で、インターネットに足を踏み入れて6年の私が、もっとも“批判的意見”を覚悟して胃の辺りを押さえる題名がある。それは、
あの・・・
だ。メールでも掲示板でもそうなのだが、「あの・・・」という題名だと、
あの・・・ 投稿者:通りすがり
テキスト王とか名乗りながら、更新は月に1回ですか。
あの・・・ 投稿者:匿名
いまどきテーブルレイアウトで、これだけ偉そうにサイト作成術を説かれても失笑する人が多いでしょうね。
と続くような気がしてしょうがないのだ。
あの・・・ だけ見れば、攻撃的な印象は受けないのに、なぜ批判的意見の題名に「あの・・・」が選択されるのか。
人はわりと、赤の他人に対して怒りを表す時、「呆れた感」みたいのを纏うことが多いと思う。
「てめえの態度、ありゃなんだ!? ふざけんじゃねえぞ!」
だと、いい年こいてそんなに熱くなんなよ、おまえ小学生かよ、という風に返される(馬鹿にされる)恐れがあるが、
「あなたの態度にはがっかりしました」
だと、精神的に大人の私が子供じみている君に指摘してあげたよ、と相手より上に立つことが出来る。
「あの・・・」というあまり力の入っていない題名は、呆れた感を表せるのと同時に、「別に本気になって反論して来なくていいですよ。こちらにとってはどうでもいい話なので。まあ、なんとなく書いてみただけです」という醒めた意識を示すことが出来、鬱陶しい返信を防ぐ、または流すことが可能だ。それが選択される理由なのではないかと私は考える。
多分、サイト制作者にはそれぞれ独自の「批判的意見を覚悟する題名」があると思う。また、「批判的意見を覚悟するハンドル」「可愛い女の子じゃないかと思うハンドル」なんていうのもあるだろう。そういうものを一度まとめてみると楽しいかもしれない。