ネット話系エッセイ-29 最後のエッセイ

2004年3月31日執筆


「さっか道」が終わった時はさっか道のあとがき、「メールフレンド」が終わった時はメールフレンドのあとがきを書くだろうから、「テキスト王」のあとがきを書けるのは今日だけ。それに、みんながみんな、さっか道とメールフレンドを読んでいるわけではないだろうから、順番は少々おかしいような気がするが、つらつらと記していきたいと思う。

 6年と少し前にサイトを立ち上げた時、これほど長く続けられるとは想像していなかったが、やめる想像もしていなかった。年齢を重ねる想像が出来なかったという言い方がぴったりと来るかもしれない。永遠の「作家志望」で、くだらないことを書きながら面白おかしくやっていけるのではと真面目に思っていた。念願叶って小説家として本を出してからも、このエリアは死ぬまでの遊び場だと思った。
 しかし、一つ、また一つと年を取るに連れて浮かれた気持ちがなくなってきて周囲の景色が目に入るようになり、自分が行こうとしていた場所と、自分が今いる場所の違いに耐えられなくなってきた。
 人には適性というものがある。今、自分がここでやっていることは身の丈にあったものなのかもしれないが、自分の能力を自分で見切って、それに合わせて方向を決めるというのはどうも私には出来そうにない。やはり、やりたいことをやるのが自分にとっては一番だと思う。たとえ、目的の場所へ辿り着けなかったとしても、後悔はしないだろう。

 考えてみると、サイトを立ち上げた時とサイトをやめようとしている今の状況は本当によく似ている。明日すらどうなるかはわからないし、お金もないし、名誉もない、理解してくれる友人もごくごく少数だ。だが、今は6年もの時間をかけて作ったこのサイトがある。
 テキスト王の更新を終了すると決めた時、今後、どれだけ悪い状況に置かれようとも、昔は見知らぬ人からたくさんメールをもらったとか、雑誌の取材を受けたとか、過去の栄光に精神的にすがる(それでいて前向きにはならない)ようなことだけはやめようと思ったが、このサイトを作り上げたことだけは誇りとして胸に刻んでおきたい。ちっぽけなプライドだが、逆境に置かれた時、きっと力になるだろう。

 内容も技術的にも劣ったサイトだったが、本当にたくさんの人に感想や励ましのメールをもらい、大変嬉しかった。そして、サイトを作るにあたって、いろいろなツールにお世話になった。優れたツールを公開している人たちに心から感謝したい。うちのサイトにリンクを張ってくれた人や、友人や知人にメールで紹介してくれた人、掲示板やメールで私の疑問に答えてくれた人、とにかく、このサイトを少しでも気に掛けてくれたすべての人に感謝したい。

 面白かったと言ってくれた人も、文句を言っていた人も、テキスト王から次のサイトへ移動した時、または布団に入って朝目覚めた時、このサイトのことなどどうでもよくなっているだろう。これは皮肉などではない。実際にそういうものだ。
 私のような目立ちたがり屋はあっさり忘れられるのがつらいので、次の挑戦がうまく行かなくなった時にでも、「テキスト王復活」などと書き、あちこちのサイトに「テキスト王復活するらしいです」などと取り上げられることを妄想してしまいそうだが、私がこれからやるべきことは、自分のことを思い出してもらうことではなく、新しい世界で自分のことを知ってもらうこと。それに一度離れてしまったら、戻ったとしてもあるのは栄光ではなく、なんとなく生ぬるい居心地だけ。このサイトを置きみやげに、振り返らずに自分の道を進んでいきたいと思う。そして、ネットで得たものを糧にして、私が新しく登る山で思いっきり暴れたい。

 思えば、サイトを立ち上げてから気が休まる日はなかった。旅行に行った時もPDAでメールや掲示板のチェックをしていたので、6年と9カ月、一日一回はネットにつないでいたように思う。殻に閉じこもってしまえば簡単だったが、出来るだけうちのサイトを読んで何かしらの感想を抱いた一人一人と向かい合う努力はしていた。別に疲れてはいないが、今日一日だけはネットにつながずに海にでも行って砂浜をのんびり散歩したいと思う。

 最後に。

 本当に今までありがとうございました。そして、さようなら。

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