昔の作品系エッセイ-10 処女作「消えた名画」

1998年12月11日執筆


 ついに、生まれて初めて書いた小説、「消えた名画」を発見した。
「名探偵推理クイズ大百科」を読み、アガサ・クリスティのようになりたい(正確に言うと、アガサ・クリスティのように金持ちになりたい)と願った小学5年生(当時、バレンタインのチョコ通算獲得数0)が、400字詰め原稿用紙にして10枚も書いた推理小説は、果たしていかなるものだったのか。
 類型的なキャラクターを堂々と使い、トリックのオリジナリティのみを追求した17年前のこの作品は、ある意味、新本格というジャンルの元祖かもしれない(笑)。
 今回、こんなの書いてても、将来作家になれるんだという勇気を、若い作家志望の皆様に与えようと、あえてホームページ掲載を決意した。

 なお、書式は見やすいように直したが、誤字・脱字は忠実に再現したことを明記しておく。

 消えた名画 作・工藤圭

 私の友人、そして私のよきライバルの‘工藤 圭’は推理においては天才的頭脳を持つ人物だが、いっぺん推理をわすれれば、ごくふつうの人間である。身長は約180CMぐらいのかなり大男である。この男が最初に解決した事件をここに紹介したい。

 一人の男が竹内家の門の前に立った。
 そして、男は、ブザーをならした。一分もすると広い庭から竹内亮一が出てきた。
「やあ工藤じゃないか。どうしたんだよ」
 竹内は驚き、声をだした。
 いままでだまっていた工藤が口を開いた。
「いままでいた会社がつぶれちまって……なにかいい職ねえかなあ?」
 竹内はウーンとうなって言った。
「それなら……お前、感がいいから、私立探偵というのはどうだ?」
 工藤は少しうなってから、
「うーん。それはいいなあ」 
 工藤は満足気に答えた。
「でも金がないんだよなあ」
 工藤はフッーとため息をついた。すると竹内は、
「心配するなよ。おれがいるじゃないか」
「それもそうだな」
 竹内は、微笑した。

 時はすでに2年たっていた。そして竹内家に一本の電話がきた。
「おお、工藤か。えっー仕事がきた!? それはよかったなあ。それで? 絵のガードマンか。それで日本一しゅう?」
 工藤のはずむ声が、竹内の耳にはいってきた。
「それで、東京から、広島、宮崎、長崎、大阪、新潟、青森、山形、福島、そして東京というふうにいくのさ」
 工藤は言った。
「それで明日出発か。じゃあ、7時、東京駅いくからな」
 竹内は電話をきった。竹内は思った。
「しかし、これは、かなりの事件になりそうだ」
 この時、この言葉がそのまま事件になるとは、工藤も竹内も思っていなかったのである。

 チュンチュンとすずめの声がなり、カーテンのすき間から明るい日ざしがさした。竹内はゆっくりおきて、きがえ、時計をはめた。
 竹内は、自分の車に乗り、東京駅にむかった。
「やあ竹内!」
 工藤が声をかけた。
「あなたが竹内石油会社の社長さんですね」
 工藤のとなりにいるかなり年をとった、老人が声をかけた。
「おっーしつれい。私の名前は山田ともうします」
 と言った。
「竹内、この方は警部さんだ」
 工藤がいった。
「さっそくで悪いんですが工藤さん、一通のきょうはくじょうが、この計画を担当した、川口博物かんのかん長にきたんです」
 さっそく警部は、一枚の手紙を私たちに見せた。

「川口さんよ。ずいぶん大変なことをやるそうじゃないか。多分、お前の絵は、ピラミッドのちょう点から、とられていくだろう」

「うーーん」
 工藤はうなった。
「ピラミッドのちょう点とは?」
 警部が私に聞いた。
「それは、私にもわかりません」
「いよいよ出発の時間ですね」
 警部がいうと一枚の紙をだした。

警部 川口 工藤 田中 佐藤 安藤 吉川
森田 名画 竹内 松川 吉田 森川 松田

「なるほど、田中というのは、絵のコレクター、佐藤、安藤、吉川、吉田、森川、松田は私の部下です。森田は、招たいきゃく、松川もそうです」
 警部は言った。
「あの絵のかちはどのくらいなのでしょうか?」
 工藤が聞いた。
「日本円になおして、130億円ほどです」
「それは大変ながくですなあ」
 竹内がいった。‘ジリリリリン’とベルの音がなり、ゆっくり列車は発車した。
「工藤さん、竹内さん、お食事でも……」
 と警部がいった。
「ああ、いいですよ。ちょうど、はらもへってきたことだし。なあ竹内」
 工藤ははらをおさえながら、言った。
 やがて三人は食どう車にのると、コーヒーを3つ注文した。
「警部さん、この間のきょうはくじょうのしもんはとれましたか?」
 と工藤が聞いた。すると警部は、
「やあ、それがさっぱりなのですよ。男の字ということだけで、あとはなにもわかりません」
 警部はざん念そうに言った。
「しかし、どこでとるとも書いていないのでさっぱりわかりません」
 と警部はつづけていった。
「とにかく全列車に警びをひきましょう」
 工藤はいった。
 そのうちに、この列車に乗っている全員が食堂車にはいった。そしてだされたコーヒーをのんだとたんに、全員ぐっすりむねってしまった。
「工藤おきろ!」
 竹内がおこした。
 竹内と工藤はすぐかぎをこじあけて名画にいったがすでに時はおそかった。
「なんてことだ。30分しかねむっていただけというのに。それにここは完全なる密室だったはずなのに」
 竹内はガックリこしをおとした。
「はたしてどうやってぬすんだのだろうか? 外部からの犯行はまず不可能といっていいだろう。では内部の犯行だろうか? しかし全員すいみん薬でねむらされたはず……。それに完全な密室だったへやにどうやってはいるというのだ」
 工藤は言った。
「警部。ここで全員にアリバイをきいてみましょう」
 と竹内が言った。
「いいでしょう」
 警部は言った。

 2 全員のアリバイ説明

 まず工藤(以下・工)と竹内は、田中(以下・田)のアリバイをしらべた。

工「あなたはたしかにすいみん薬をのんでねむっていましたか?」
田「ええ、たしかにぼくは、ねむらされてました」
工「あなたは絵のコレクターをしてるそうですが、あなたはこの絵をほしいという気はありませんでしたか?」
田「ええ、多少はありましたよ。しかしぬすむことなど……とてもとても……」
工「わかりました。ももういいでしょう」

 工藤は言った。
 次は森田(以下・森)に聞いた。

工「森田さんはしょうたいきゃくだそうですが、絵のことは……」
森「ぼくがそんなことするわけないでしょ!」
工「それでは、あなたはすいみん薬でねむらされていましたか?」
森「ええ、もうぐっすりと」
工「それではもういいです」

 松川も同じ答えだった。警部の部下も。しかし、もう4人いた。工藤、竹内、川口、そして警部。しかしこの4人も無実だった。

 3 工藤のかんがえ

「なんてことだ……内部の犯行はないということか! それでは外部からの犯行か? そんなことないはずだ。この列車はつねに、150Kmではしっているはずなのに……。しかしそれしかかんがえようがない。もしそうだとしたら犯人はどのようなトリックで……」
 工藤はうなった。
「しかしとけないなぞはないはず」
 竹内が言った。するととつぜん、
「わ、わかった。みなさん食堂車に集ってください」
 工藤が言った。

 4 かいとうへん

「みなさん。お話ししましょう。まずトリックから説明しましょう。犯人は空からやってきたのです。図で説明しましょう

(※ と、ここでトリックを解明した図が出るはずなのですが、こっちの手違いで消えてしまいました。いつかそのうち書き直してアップします 2002.8.6 工藤)

 まあこういうことでしょうな。こうなれば列車のかぎをこわさなくともかんたんにぬすめます」
「うーん見事工藤君」
 川口が言った。
「では犯人を言いましょう」
 全員きんちょうでしずまりかえった。
「犯人は……」
「犯人は川口さん(絵を提供した博物館の館長です・工藤)あなたです!」
「そ、そんなばかな、なにを証こにそんな」
「たしかにあなたはすいみん薬をのまされてねむっていました。しかし犯行を計画したのはあなたです。あなたは、あなたの長男と次男を使ってヘリコプターをそうじゅうさせた。そうではないですかな?」
「うーんさすがは工藤君。たしかにぼくは、そうしました。しかしなぜわかったんだ?」
 そういうと工藤は、
「まどからよく見えなかったけしきがはっきりみえるようになったからですよ。では私はこれで。あとは警部におまかせします」
 というと工藤はさっていった。

 完

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