今の世の中、ウェブサービスというのは山のようにあると思うが、日本語の個人サイト上で使用されているウェブサービスというのはだいたい共通である。しかし、みんながみんな同じものを使っているということはない。たとえばソーシャルブックマークサービスのボタン
などはよく見かけるが、付けていないサイトの方がずっと多い。
 サービスを使っている人には使い続けている理由が、サービスを知っているけど使っていない人には使わない理由がそれぞれあるはずだが、案外語られない。だがその理由を聞けば案外お互いに「へえ」と感心するかもしれない。もしかしたら誤解が解けたりするかもしれない。
 で、今回、約四カ月ぶりに読者の方からメールをいただいたことを記念して、Geekでもなんでもない私がいくつかのウェブサービス、あるいはスクリプトについて「使おうと思ったけどやめた」「使っていたけどやめた」「使い続けている」、その理由を書いていこうと思う。これからサイト運営を始めるという人たちの参考になれば幸いである。
 念のために書いておくが、使わない、あるいは使うのをやめたといってもそのサービス、スクリプト、そして使用者を否定する気は毛頭ない。もし明らかな事実誤認があればなんらかの手段で是非指摘してほしいと思う。
使おうと思ったが使わなかったもの
- ソーシャルブックマークサービスのボタン
 
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 設置寸前の二歩手前ぐらいまでいったがやめた(特にはてなブックマークのもの)。
 どこの組織が作ったものか、あるいはどこの組織と関連しているものかわかるパーツというのは、実用性関係なしにインターネットでの自分の立ち位置を訪問者に示すために使うというのがあると思う。たとえば、はてなブックマークのボタンを記事に貼っている人は、はてなユーザである訪問者が気軽にブックマークできるようにボタンを設置したというだけじゃなくて、「自分ははてなブックマーク(ソーシャルブックマーク)という仕掛け、それに付随した社会を視野に置いてますよ」ということを示したいのではないかということだ。
 で、はてなブックマークの注目エントリーを毎日必ず覗いている私としては、はてなブックマークボタンぐらいは付けておくかという気持ちがあった。しかしやめた。私は他サイトの記事をブックマークするとき、記事に貼られたブックマークボタンを押したということがただの一度もない。必ずブラウザに組み込んだブックマークボタンを押している。他のユーザもツールバーなどからブックマークしているのではないか。であれば記事に貼っても使われないだろうな、じゃあ付けなくていいかという流れ。アピールと必要性を天秤にかけた結果、アピールの方が軽かった。
 ただ、検索結果などを通じて記事単体にアクセスしたのではなく、リンクなどからトップページにアクセスし、そこが複数の記事をずらりと表示させているサイトであれば使う可能性はあるかも。
- ソーシャルブックマークコメント数の表示及びコメントページへのリンク
 
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 ブログに設置寸前の一歩手前ぐらいまでいったがやめた(特にはてなブックマークのもの)。
 訪問者としての立場だとこれはすごい有用。たとえば素晴らしい記事を読んだとき、このリンクからページにアクセスしてずらりと並ぶ賞賛のコメントを見ると非常にいい気分になれる。インターネットを通じて誰かの文章を読む場合、大抵、個人の体験で終わるが、人間というのは自分が見たものが素晴らしいと思えたとき、その思いを共有できる相手を探して自分がいかにいいものを見たか、それを見たということがいかに幸運なことか確認し合いたいという欲があると思う。このリンクはその欲求を手軽にかなえてくれる。
 じゃあどうして設置しないのかといわれると、現在のうちのサイトでは「0 users」が淡々と並ぶだけだろうなと。反応表示系のスクリプトは反応がないと全体の雰囲気を寂しくさせることが否めず、であるならばわかっていてその雰囲気を作らなくてもいいだろうという結論に達した。
- サイト検索にくっついているウェブ検索
 

 XOOPSの検索モジュールはあいまい検索ができないので、それをしたくて「Google フリー検索」を付けようと思った。同時にウェブ検索もできるようにしようと思ったが、今のブラウザはほとんど検索バーが付いていてみんなそこから検索しているだろうから、サイトに設置しても使う人はいないだろうなと思って結局フリー検索そのものをやめた。
 ここからは訪問者としての話になるが、私には好みの検索というのがあってGoogleを使いたい。だからブラウザの検索バーはGoogleを選択している。ところがサイト内検索にくっついているウェブ検索はこちらが検索システムを選べない。Googleではなく、gooだったりYahoo! JAPANだったりする。新聞社サイトに設置されているようなシステムだとどこが提供しているのかわからない場合もある。その揺れが駄目なのでサイトに設置されているウェブ検索を使ったことはほとんどない。
- この記事は役に立ったか系アンケート
 

 コメント欄の代わりに付けてみようと思ったがやめた。「役に立った」という意見は運営者にとって力になるだろうが、「まったく役に立たなかった」というのをどこがどう駄目なのかという意見なしに送られた場合、運営者はどうしていいのかわからなくなるのではないだろうか。私も昔、「面白くなくなったのでもう二度と来ません。さようなら」と書かれたメールをもらったことがあったが「どうもすみません」と謝罪の返信を送ることしかできなかった。
 あと、記事にちょっとした間違いがあったとしてそれを読者が限りなく匿名に近い形で知らせたい場合、アンケートが設置されているがゆえにコメント欄などは無視して「まったく役に立たなかった」をクリックするというケースがあるかもしれない。これはお互いにとって不幸だ。
 記事を「役に立ったと評価された順」みたいに並べられれば訪問者にとっても運営者にとっても有用だと思うけど見たことがない……。手動で並べるしかないのかな。
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 ポジティブな反応を積み重ねていくという思想がいいと思い、また、殺風景な場所に彩りを添えるつもりでブログのタイトルの横に付けようかと思ったが、はてなダイアリーではないブログに付けたらはてな色が出過ぎるかなと思ってやめた。あとスターを付けられる人が「はてなユーザ」と「OpenIDを持っている人(=OpenIDでのログインを苦もなく実行できる人)」に限られているからという理由もあった。
 それともう一つ、「ソーシャルブックマークコメント数の表示及びコメントページへのリンク」に書いたことの繰り返しになるが、反応表示系のスクリプトは反応がないと全体の雰囲気を寂しくさせることが否めず、現在のうちのサイトの記事にスターが付けられるとは思えないというのもあった。
使ったが外したもの
- 共有SSLでのメールフォーム
 
 ポップアップウインドウで開くようにして二日間ぐらい付けてみたが、ドメインが同一ではないというのが引っかかって外した。ドメインは違うけど管理者は同じということの絶対的かつスマートな証明がどう頭を捻ってもできない。同じ理由で共有SSLを使ったログインフォームも外した。
 管理者に直接連絡を取れる別ドメインのサービスも余裕で有りということにすると、ここから先は俗にいう「ねーよ」レベルのたらればだが、悪意を持つ第三者が人気個人サイトのトップページにメールフォームへのリンク(当然ドメインはまったく違うが他にもそういうリンク先があるので気にならない)を置いて、
あたしゎ管理人さんのことがだいすきデス(*´ェ`*)
なんて感じのメッセージを送ってきた女子中学生と“人気サイトの運営者として”接触をはかるということも絶対できないとは言い切れなくなってくるので、暗号化にこだわらず同一ドメイン上にメールフォームを置く方がいいかなと。

 GoogleのアカウントかOpenIDのアカウントがあればコメントできるというのと、うちのサイトにOpenIDで登録すればフォーラムに書き込みできるというのとあまり差がないと思ったため、ブログにコメントできるようにしていたが一晩で外した。
 10年ぐらい前、テキストサイト全盛時にこれがあれば、アクセス数という曖昧なものではなくファンの実数(実体)を視覚化できるという仕掛けに魅力を感じて、みんな飛びついて使ったかもなあと思った。
- Twitterのつぶやきの表示
 

画像はFlash版だが実際にはHTML版のウィジェットを設置した。しかし、夜の11時ぐらいになるデータを引いてくるのにかなりの時間を要するようになったので外した。サーバにキャッシュを置けるようなプログラムがあればいいかも。ただ、大抵のつぶやきはサイトにわざわざ足を運ぶような訪問者にアピールするには内容が弱く、初めての訪問者に対してはもっと弱く、ようは運営者は「私はTwitterをやっている」というアピールができれば、訪問者は「この人はTwitterをやっているんだな」と認識できればそれでいい気がするので、試行錯誤して表示スクリプトを設置する労力をかけなくても、自分のページへのリンクだけ張ってる今の状態で充分かもしれない。
- 関連記事表示
 

関連記事表示を実現する「なんでもコンテンツマッチ」というサービスに登録したがいつまで経ってもクロールしてくれないので外してしまった。LinkWithinという外国のサービスも同様だった。使いたいのに使えないという方が合っている。robots.txtを読んで引き返したのか? 同じ機能を持つWordPressのプラグインが存在しているのは知っているが、うちで使っているXOOPSのWordPressモジュールは一番古いタイプでそのプラグインが使えない。入れ替えてもよかったが面倒なのでやめた。

「Internet Explorer 8: Web スライス」にあるWebスライスの一例
更新情報とブックマークのブロックで使ってみたが、数カ月に一回更新があるかどうかというものをWebスライスで見る人なんて絶対いないと思ったので外した。Webスライスを使うような人ならば、絶対RSSフィードを探して読むと思う。個人サイトでの使い道が今のところ思いつかない。
使い続けているもの
 もう外せない。XPathを簡単に書けるようにしてwedataに自らSITEINFOを登録したレベル。XOOPSで出力しているコンテンツにのみ掛けているので表示幅の狭さは置いたとしても、スクリプトを使っているならば格段に読みやすくなったと思う。本みたいにページをめくる感覚があるのがいいね!
 小説のような同一テーマで書かれた文章でありながら、多数のページに分かれてしまっているようなコンテンツを掲載しているサイトは積極的に取れ入れるべきだと思うが、『あたし彼女』と魔法のiらんどのケータイ小説以外あまり聞かないのはなぜだろう。テキストサイトに適用させたっていう話もまったく聞かないもんなあ。テキストサイトの場合は、次へのリンクがなかったり、ページごとにコンテンツを囲っている部分の表記が違ったりするせいだろうけど……。

アカウントを取ったあと、しばらく放置していたが使い始めてみた。これでコミュニケーションを取るという気にはあまりなれないが、ふと思ったことを記録に残せるというのはいいかもしれない。テキストサイト全盛期にこのサービスが存在していたら、短文系といわれるジャンルの運営者たちはみんな使っていただろうなあ。
- OpenIDを使用してのログイン
 
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自分以外誰も利用していないことは重々承知しているが、提供側だけどんどん増えて受け入れ側があんまり増えない現状が面白くないのであえて使っている。うちのサイトの通常ユーザ登録方法ではメールアドレスが必須なので敷居を下げるために取り入れたというのもあるのだが、OpenIDプロバイダにアクセスしたときに出てくるごつい感じの注意書きのページ(Yahoo! JAPANであれば、一番目につくのは“ご注意下さい”)などを読んでいると敷居が下がるどころか更に上昇という感じがする。また、取り入れて以降、ぱったり登録がなくなったというのは皮肉である。

 サイトに「QRコード」と書く場合、「QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です」と付記する必要があるので“二次元コード”としている。
 ネットカフェなどで偶然うちのサイトを発見した人が携帯のカメラでQRコードを撮影するという場面はまったく想定していなくて、「うちのサイトは携帯でも見られるよ」というのをアピールするために表示している。携帯対応シールのようなもの。その意図が伝われば、日頃パソコンから見ている人が外出先で暇潰しにアクセスしてみるかとなったとき、対応していたかどうかと考える必要がなくなるだろうと。
 最初は「QRcode Perl CGI & PHP scripts」というスクリプトで表示させていたが、GoogleのChart APIというサービスで同じことができると知ったので、そちらに移行した。
最初は普通にWordPressモジュールでRSSフィードを表示していたが、アクセスログを見ているとフィード表示プログラムファイルに猛然とアクセスがあり、そのせいでサイトが重くなったらあれだから、よく読まれるものだけ外部に委託してしまおうと思って使い始めた。特に不平不満はない。メール配信サービスも便利なのでは? ただ、「テキスト王のRSSフィードっていったらこれ」という感じで、ブログソフトウェアを変更してもアドレスは不変なのかと思っていたが変わってしまうらしいと聞いて残念。
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以上、私の「サイト上で使用するウェブサービス及びスクリプトの取捨とその理由」である。疲れた。
