2012-3-04 Sunday

ワンフレーズ芸の先へ

 頭の中でものすごく完成度の高い物語を思い描いている人って、たくさんいると思います。もし、人が人の想像、空想を覗き見ることが出来たら、その人はきっと尊敬されるでしょう。
 しかし、人の想像を見ることは不可能なので、もし、自分が考えていることは凄いということを示したいのであれば、文章や絵などに落とし込む必要があります。でも、頭の中で考えている物凄いことを、そのままの凄さで表現するということは時間もかかりますし、技術も必要ですし、とにかく大変なわけです。

 で、大変なことはしたくないんだけど、俺は凄いのであるということは示したいという場合、「こんなことも出来る、こんなことも出来る」って口から唾飛ばしながら言って、短めの芸を披露していくということになるんじゃないかと思います。たとえば、俺の頭の中で構成されたロックは、既存のロックの比ではないと言いたい人が、タッピングでワンフレーズ弾いて、そこで止めて両手を広げて耳のそばに持っていくような。
 問題は、そんな芸を披露していくうちに年を取って、俺はこんなことが出来るんだ、凄いだろとワンフレーズを弾き続けて、気がついたら三十数年経って、頭の中の(自称)凄い曲は未だ形になってないみたいになることもあるということでしょう。

 それは、あんたのことではと言われるとそうだなと思います。
 なにも完成させないまま、ワンフレーズをちょこちょこ積み重ねて気がついたらサイトを立ち上げて15年近くになっていました。15年間も“テキスト王”なのにいまだに凄くありません。一応、ピークのようなものはあったけど、こんなことも出来ると小出しにしているだけなので、年を追うごとに相対的に凄くなくなってきたという言い方も出来るかと思います。

 このまま20年、30年と年々自分の中からいろいろなものが蒸発していって小さくまとまっていくのは本意ではないので、最終的に凄いものができるかはわかりませんが、大きな舞台で勝負するために、自分が凄いと思うものを小説に落とし込んで、審査員、読者、評論家といった人たちが並んでいるテーブルに載せることを目標にして、今、長めのミステリを頑張って書いています。
 こういうのはなにも言わずに成し遂げるのがかっこよく、また、大抵、なにも言わない人が成し遂げるわけですが、先日、十数年ぶりに会った幼馴染みに、「いやー、『けいおん!』がね」みたいな話を振ったら、「なにそれ」と言われて同世代の中でのスタンドアローン化をひしひしと感じ、寂しくなったので書きました。一番好きな曲は『わたしの恋はホッチキス』です。

posted by kudok @   | Permalink

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