2012-3-10 Saturday

負けを認める

 4日の記事に補足をしておこうと思う。

 私は小説家になりたいと思って、結果、誰もが知っているようないくつかの出版社から本を出すところまで行った。インターネットをきっかけにデビューした人間ということで珍しがられて、インターネット関連の雑誌に記事が載って、インタビューが掲載されたりもした。
 ところが月日が流れて、仮にもクリエイターとして10年以上活動して、私の名前を知っている人も、本を読んだことがあるという人もまったく増えていないというのが現実だ。年々忘れられていき、また、若い人には名前を覚えられることはなく、影響力を失っている。

 もしかしたら、昔、どこかで書いた話かもしれないがもう一度書きたい。
 
 以前、岡崎美女(みお)というAV女優がいた。名前に負けていない美形の女優だったが、演劇をやりたいということで引退した。
 それから数年経って、彼女は無修正の作品で再デビューを果たした。当然、あの美形女優が無修正に出演ということで話題になり、インタビューなどもいくつかネットに上がった。その中ですごく印象的な会話があった。
 どうしてAVに復帰しようと思ったんですかという質問に対し、彼女は(私の記憶では)こう答えた。

「AVから演劇の世界へ行ってみたものの、そこでは自分は元AV女優という扱いで、かなりつらい部分があった。でも、AVの世界に戻れば主演はわたし一人、スタッフたちはみんな、わたしのことをお姫さまのように扱ってくれる。そして、帰ってきて実際にそうだった」

 これは、今の私にも当てはまる話かもしれない。
 エンターテイメント界、文学界という世界でなら、私はその他大勢の更に下の下の末端の隅にある丸まった紙に付着した糸クズにしか過ぎないが、ここにいればさっか道を、ZEROの法則を、メールフレンドを書いたテキスト王の工藤として扱ってもらえる。

 私は自分で言うのもあれだが、人生を賭けていると思う。この生き方でここまで来てしまうと、もう、普通のサラリーマンとして就職して、給料をもらって、ボーナスをもらって、お嫁さんをもらうという生き方は不可能だからだ。
 そして、人生をベットした結果が今(これ)だ。

 だったら認めるしかない。私は負けた。
 デビューから10年以上経っているのに、一向に自分の書いたものが行き渡らない作家。毎年、影響力が小さくなっていく作家。本を出せない作家。サイトの更新以外、新着情報がない作家。ネットを一歩出てしまうと知名度がゼロになる作家。昔、私が思い描いていた“小説家として活躍している未来の自分”と比べて、これが敗者でなくてなんだろう。
 ネタバレをしよう。
 未だ未完の『さっか道』の最新話で栄光の階段を駆け上がっている途中の彼は、今日、負けるのだ。

 だから、もう一回勝負することに決めた。
 私はずっと、今の自分を負けということにしたくなかったが、負けを認めて再度勝負する方がよっぽどいいと思うようになった。
 小説家になりたいという夢を叶えて、文庫本を何冊か出したテキスト王の工藤というイメージをなんとかキープして、細々とここで物を書いて生きていけば、自分の中では引き分けということに出来たと思う。でも、第三者からはどう見ても負けているのに、その視線に気づかず引き分けにこだわるのは敗者以外の何者でもない。しかも愚かな敗者だ。周りから見ても痛々しいだけだ。同じ痛々しさなら、空元気でも俺はまたやってやるぐらいのことを叫んだ方がいい。

 うちのサイトのプロフィール欄に、私の自己紹介が載っている。今まで、自分の目標として『なにをしているのかわからない人になりたい。』と書いていた。もう肩肘張らずにのんびりと書いていけるぐらいの立場といった演出をして、引き分けに見せかけたかったからだ。これを今日、書き換えようと思う。

 私は以前にも同じようなことを考え、日記に書いたことがあるが、どうしても一から新人賞に応募するといったことに踏み切れなかった。自分が負けたと認められなかったからだ。
 でも、もう認めた。すっきりした。
 私よりずっと若く、才能も柔軟性もあり、サイトにこんなことを書いて同情誘っている奴には絶対負けねえと闘志を燃やしている人たち、あるいは才能も実績もある、私より年上の人たちとの新人賞ガチバトルに挑みたい。

 なんで、こういうことを書こうと思ったのかと言えば、もし、自分にファンと呼べる人がいて、その人たちがここを見てくれているのであれば、なにも更新していない時でも自分がなにをしているのか知ってほしかったからだ。

 この件についてはこれで終わり。
 あ、サイトは続きます。

posted by kudok @   | Permalink

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