第10回目の法則 「友達から付き合いたい」という女の言葉を過信し過ぎてはならない
シチュエーション
21歳の大学生(男)と20歳の短大生(女)。二人は同じコンビニでバイトしているバイト仲間である。男は、彼女の真面目な働きぶりと客の子供に接する態度の優しさに惹かれ、彼女を好きになり、告白を前提としたデートに誘い、見事にOKをもらう。
そして、デート先である江ノ島水族館で、男はアザラシを見物している彼女に向かって堂々と告白することにした……。
女
「ねーねー、見て、ほら、アザラシが餌もらってるよ。かわいい(*^^*)」
男
「ほんとだ」←既に緊張している
女
「アシカもいるよ」
男
「いるねー」←頭の中で告白のシミュレーション中
女
「あたし、水族館に来たの、小学生の時、油壺マリンパークに行った以来だから、今日は凄く楽しいよ」
男
「あ、マリンパーク、俺も行った! 確か世界最大の淡水魚とかいるところ」
女
「そうそう!! なんて言ったっけ……ピクルスだっけ?」
男
「それは、マックのハンバーガーに乗ってるきゅうりみたいなやつだよ(笑)」
女
「あはは、そうか(笑)」
男
「魚の交通ショーとかもあったよね」
女
「えー、知らないー、なにそれ?」
男
「小さい魚が、赤の信号だと泳ぐのやめて、青になると泳ぎ出すっていうやつ」
女
「へー、そんなのあったんだぁ」
男
「あったんだよー」
女
「そっかぁ」
ここで妙な間があく
男
「……あの……さぁ」←決心した
女
「ん? どうしたの?」
男
「浩子ちゃんって、彼氏とかいんの?」
女
「……えー、どうしてそんなこと聞くの?」←やや困った感じで
男
「いや、なんとなく聞きたいなと思ってさ」
女
「……んー、今はいない……かなぁ」
男
「前はいたんだ?」
女
「っていうか、あたし、ちょっと前に別れたばっかりなんだ。だから今日は気分転換に来たっていう意味合いもあるんだ。だから、中村君に誘ってもらってよかった」
男
「……ねぇ」←別れたばかりという所にややひるむが、意を決して
女
「なに?」←なんとなーく、そんなような雰囲気を感じ始めてきた
男
「あの、もし俺でよかったらさ」
女
「俺でよかったら?」←とりあえず最後まで本人の口から言わせる
男
「まあ、えーと、付き合ってもらえないかなぁ……と思って」
女
「……」←とりあえず予感的中した
男
「……」←とりあえず彼女の言葉待ち
女
「……それって本気なの?」
男
「当たり前だよ、冗談じゃこんなこと言えないよ」
女
「……あたしなんかのどこがいいの?」
男
「どこがって……そりゃいろんなとこだよ」
女
「いろんなとこってどこ?」
男
「仕事を一生懸命やるとことか、優しいところとか……」
女
「中村君、まだあたしのことよくわかってないから、そんなこと言うんだよ」
男
「そんなことないよ、浩子ちゃんのいいところわかってるつもりだよ」
女
「あたし、嫌なとこいっぱいあるよ。あたしなんかと付き合ったら、中村君すごく嫌な思いしちゃうと思うよ」
男
「そんなの……付き合ってみなきゃわかんないじゃん。……俺のこと嫌い?」
女
「嫌いっていうんじゃないけど……でも、まだ中村君のことよく知らないし……」
男
「……」
やや気まずい沈黙
女
「あの……友達からっていうんじゃ駄目かな。とりあえずこうやって遊びに行ったりして、中村君のこともっとよく知りたい。それで中村君の気持ちに応えられそうだったら、ちゃんと中村君とお付き合いしたい。……それじゃいや?」
男
「いや、それでもいいよ」←駄目だと思ったが、とりあえず成功と見た
女
「うん。……あのね……」
男
「ん?」←ほっとしている
女
「あたし……中村君のこと、いっぱい好きになれるといいな(*^^*)」
男
「うん(*^o^*)」←意外に前向きな一言に、かなり舞い上がる
女
「それじゃペンギン見に行こうか!」
今回は記念すべき第10回目ということで、女性が男性に告白された時に必ず言うフレーズを散りばめてみた。頷かれている方も多いと思う。
さて、今回の法則だが、この時にはまだ通用して来ない。問題はここからである。
男性が慎重に事を進めていけば見事カップリングとなるわけだが、早まってバイトの男同士の飲み会などで、上記の出来事を酒の力でべらべらと喋った挙げ句、『浩子ちゃんは、もうほとんど俺の彼女だから』などと言ってしまうと法則の登場と相成る。
『友達から付き合いたい』は決して交際への確実な約束手形ではない。
女
「中村さん、ちょっといいですか」←バイト先で、敬語に加え「さん」付けという他人行儀で
男
「あ、はい」←思わず「はい」
女
「休憩室に来てくれる?」←とげとげした言い方で
男
「あ、うん」←ただならぬ雰囲気を感じている
休憩室
女
「この間の飲み会で、この間のこと喋ったの?」
男
「え、いや、まあ……うん」
女
「なんて言ったの?」
男
「いや、だから……浩子ちゃんに告白したって……」
女
「それで?」
男
「……それでって?」←しどろもどろ
女
「あたし……まだ中村君の彼女じゃないよ」
男
「……うん」
女
「でも、そう言ったんでしょ?」
男
「いや、言ったっていうか……」
女
「……あんまり勘違いしてほしくないんだけど」
男
「……」
女
「あんまり、人に言うのやめてよ」
男
「……うん」
女
「あと、この間誘われたサッカーなんだけど、授業入って行けなくなっちゃったから」
男
「あ……そう」
女
「それじゃ」
男
「……うん」
女性というのは、自分の気持ちが確立していないうちに告白された男性に自分との関係を既成事実のように他人に喋られると、そのことに反発して大抵こうなる。例え手をつなごうが、キスしようが、最後までいっちゃおうが、男性に対する情がある程度のレベルに達してないうちに自分のことを彼女扱いされるとかなり怒るのだ。よって、例え親友であろうがなんであろうが、男性は決して付き合いが成立していない女性とのことを彼女扱いして喋ってはいけない。上の例のように、必ずどこからか彼女に漏れ聞こえるからだ。
ちなみに女性の方はというと、自分の友達に男性の告白の言葉から何から、あったことをすべて喋っているということはよくあることだが、この辺のことは黙認しないと男性としては失格だろう。