第21回目の法則 告白時に「ありがとう」とお礼を言われると失恋確定


シチュエーション

 某文房具メーカーに勤める女(19歳・事務)と同じ会社に勤める男(28歳・営業)。会社で行われたイベントをきっかけに男の方が「わたし、魚食べたことないんですぅ」などの不思議発言連発の女に好意を持つようになり、電話やメールで何度か接触。最初はよそよそしかった女だが、次第に男に対して甘える素振りを見せるようになり、男の方はこれは行けると東京ディズニーシーに誘い、告白することにした……


「あ、美紀ちゃん? 柴村です。今平気?」

「うん、へいきぃ~」

「何やってたの?」

「猫と遊んでたの」

「あ、ノラとだ」←美紀の飼っている猫の名前。

「うん」

「……」

「……」

「美紀ちゃん、今日はなんか元気ないね。どうしたの?」

「う゛ううう(雰囲気を伝えるための表記ですので目を瞑って下さい)」

「相談に乗るよ」

「……実はぁ、美紀、会社で怒られちゃった」

「どうして?」

「美紀が間違ってディスクの大事なデータを消しちゃったんです。詳しい人が復活? させようと頑張ってくれたけど駄目で……」

「あー、そうかぁ。だけど、しょうがないよ。そういうミスは誰にでもあるよ」

「そうかなぁ……」

「そうだよ。元気出せよ」

「う゛ぅぅぅ。そう思ってるけど凹んでる」

「俺はいつだって美紀ちゃんの味方だし、いつでも相談に乗るから」

「ほんとに?」

「ほんとだよ。だから、落ち込んだら遠慮なく俺に電話してきなよ。いくらだって話し聞くから」

「……※

「よし、じゃあ元気出すために遊びに行こうよ! ディズニーシーとか」←これ幸いにと

「わぁ、行きたい行きたい! 行こ行こ!! 楽しみだぁ」

「よし決まり!」

「わ~~~い!」

 まあ、その辺に普通にある会話例だと思う。ポイントは女が発した「……ん」という言葉だろうか。これは「うん」という返事を短くした女性独特の言い回しで、「ちょっと甘えている自分を表現したい」の意で使われる。恐らく、受話器の向こうでは首を小さくカクンと縦に振っているのだと考えられるが、実際に現場を見たことがないので正確なところはわからない。男の方は、甘えられてるんだ、俺のことを好きなんだと舞い上がってしまう場合も多いが、お兄ちゃんと見ている男、友達、気の置けない会社の先輩辺りでも普通に甘えるので注意した方がいいだろう。

 ディズニーシーでさんざん遊んで(ちなみにお金は男持ち)その帰り


「楽しかったね」

「うん、楽しかったぁ。また来ようね!」

「そうだね」

 女、にこにこしながら前に歩いていく


「美紀ちゃん」

「うん?」

「手……つなぐ?」←脈拍急上昇

 女、黙って左手を伸ばして男と手を繋ぐ。男の下半身がちょっと反応


「美紀ちゃんの誕生日って来月だったよね」

「うん、そうだよ~」

「なんか、欲しいものある?」

「え、なんか買ってくれるの?」

「あんまり高いものじゃなかったらね(笑)」

「わーい、えっとねー、えっと、じゃあ、プーさんのぬいぐるみ!」

「プーさん好きなの?」

「うん、大好き。美紀の部屋にもいっぱいあるんだよ」

「へえ。そっか、じゃあプーさんのぬいぐるみ、プレゼントしてあげる」

「わーい!」

 前方に舞浜駅が見えてきた。男は今までの実績(度重なるメールと電話、何度かのデート、そして今日のディズニーシーと手を繋いだこと)から考えて事実上「落とした」と踏んだが、早いうちに確実にしたいと考え告白を決意した


「美紀ちゃん」←立ち止まって

「はい?」

「……俺、美紀ちゃんのこと、ずっと大切にしていけると思う」

「……」

「今日みたいに遊びに行ったり、この間みたいに励ましたりして」

「……」

「だから……さ、あの、俺と付き合ってくれないかな」

「……」

「……」

「……」

「……」

ありがとう

「……」←それってどっち方向のお礼? と思いながら声を出せず

「わたし、柴村さんとこうして遊んでいるとすごく楽しいです」←突然、自分のことをわたしと言い始める

「……」←不安

「わたし、兄弟がいなくてお兄ちゃんとかに憧れていたし、だから、柴村さんがこうやっていろいろ遊んでくれると本当に嬉しいし、お兄ちゃんがいたらこうして甘えたりするんだろうなぁって思います」

「……」←悪い方向に話がずれてきたのを確認

「今のわたしは会社の仕事とか満足に出来なくて、だから一生懸命仕事を覚えようと思っていて……恋愛とかを考える余裕はなくて……もし、わたしが甘えてしまったことで柴村さんに勘違いさせてしまったのならごめんなさい」

「……」

「だけど、わたしにとって柴村さんは大事な人です。あの……それだけはちゃんと伝えたいです。ごめんなさい」

「……」

「それじゃ、電車来るからここで。今日は本当にありがとうございました」←手を離して、その手を振る

「……」

「じゃあ、明日、仕事頑張りましょうね」

「あ……」

「はい?」

「あの……お兄ちゃんから恋人に昇格出来る可能性ってあるかな」

「……」

「……」

「ごめんなさい(=しつこいんだよ、馬鹿野郎)。それじゃほんとに電車来ちゃうんで」

 個人的には鉄板の法則である。「ありがとう。わたしも好きでした。よろしくお願いします」となったパターンに出会ったことがないし、また聞いたこともない。もし、ありがとうから始まってOKとなるなら、「ありがとう、嬉しい、でもわたしなんかでいいの? わたし、気が強いし○○くんのことを傷つけちゃうかもしれないよ」と、途中で「でも」が入るパターンだろうが、「ありがとう、嬉しい、でもわたしにとって○○さんはお兄ちゃんです」となることの方が多いと思うので、でもが入ってもまったく信用出来ないし、してはいけない。
 男性としては、「ありがとう」が来たから「もう聞かなくてもわかる」ではなく、「ありがとう」から女性が構築していく、

あなたの告白を受け入れられなくてごめんなさい、あなたは決して嫌な人ではないけど、セックスはしたくありません、だけどわたしのことを恨んだりしないでね、別にわたしが悪いっていう話しじゃないよね、だって、好きっていうのはいい人だからとか、適当に甘えられるからとか、一緒にいると楽しいからとか、そういう単純なものじゃないでしょ、今日のことは二人だけのいい思い出にしましょう、それに顔も見たくないって言ってるわけじゃないんだから、間違っても他の人にわたしの悪口なんて言わないでね、とにかく変に恨まれたくないので告白してもらったことに対するお礼みたいのは“こんなわたしを好きになってくれてありがとう”みたいな感じで多めに言っておきます、本当にどうもでした、出来るだけ早くわたし以外の女に目を向けて下さい、よろしくお願いします。

 という雰囲気をきちんと受け止めて去っていきたいものである。

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