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本屋に到着し、早速、公募情報が載っている雑誌を捜索すると『チャレンジ! 公募』なるストレートなネーミングの雑誌が見つかった。創刊特別定価600円ということで、この手の雑誌にしてはなかなか安いかもしれない。
(よし、これにしよう)
そう決心しつつ、若干の気恥ずかしさを伴いながらレジに向かう私。
エロビデオを借りる時だったら、レンタルビデオ屋の店員に対し、(借りちゃ悪ぃか、バーロー。でめえも同じ穴のむじなだろ)と勝手ながらも上手に出れるわけであるが、公募情報雑誌を買うとなると、店員から(お、そんなに若くはないけど、まだまだ夢追ってるんだね。叶わぬ夢かもしれないけど、が・ん・ば・れ、夢追い人☆)などと思われる気がして、(はぁ、頑張ります……)ってな感じで下手になってしまう。まあ、こういうのを自意識過剰というのであろうが。
家に帰って、早速本を開き、「どの賞に応募するべきか」の検討に入った。
まず、私側からの条件として
という二つが挙げられる。これが叶わないと、受賞の意味がまったくないのだ。
この世には、賞を獲ってはい終わり、という文学賞が結構ある。こういう賞を獲って、後になんのフォローもなく消えていった文学賞受賞作家は腐るほどいると思う。
力がなかったからと言ってしまえばそれまでなのだが、本は出してくれない、担当の編集者もつけてくれない、ではその後の成功などあるはずもない。
そう考えて探してみると、メジャー、マイナーを問わず、幾つか条件に当てはまる賞が見つかった。
中でも私の目を惹いたのは“第6回 ティーンズハート大賞”である。
ティーンズハートの読者を対象とした、時代(いま)のセンスが光るストーリー性豊かな小説を募集。恋愛、ミステリー、エンターテイメントなどジャンルは問わない。大賞作品は「ティーンズハート」の1冊として出版される。
ということで、これはようするに、コバルト文庫や講談社X文庫(早い話が背表紙がピンク色の少女向け小説)の賞のたぐいだと思われるのだが、私は二十歳前後の若かりし頃、酒が入ると友人たちにこんなことを言っていた。
「コバルト文庫とか見てよ。高校生とかが書いたりすんだよ? しかも、句点がつくたびに改行だよ。詩じゃねえんだからよ。しかも、なんか、☆とかハートマークとかが付いててさ、それが小説かよ? こうなったら、俺がコバルトノベル大賞にでも応募して、真の小説とはなんたるかをこの世の中・高生に教えて、少女小説界に革命起こすしかないな、おい」
「まあ、頑張ってよ」と言われながらも、そんな暴言を吐いていた日々からもう6年。
未だ革命は起こせていない(笑)。
とは言え、一度、畑違いの私が、完全に少女小説作家になりきり実際に賞に応募してみたらどういう結果になるんだろうという興味もあったので、とりあえずネタだけは一つ作っておいた。
そのネタを今ここで引っぱり出し、世に問うのも悪くはない。
(よし、まずは腕試しとして、最初の応募はこの賞でいこう)
そして私は早速、本屋に行って少女小説の売れ筋を研究することにした。