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Dec 2, 2008
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第二十回 インタビュー その2
「すいません、遅くなっちゃって」
待合室で待っていると、地図柄の入った土色のシャツにジーンズというラフな格好をした都丸氏が恐縮しながら現れた。
(へえ、こういう人なんだ……)
MMRの都丸氏は好青年以外の何者でもないが、本物の都丸氏は腰が低いながらも切れ者という印象を私に与えた。10人ぐらいで議論をしていたとしても、彼の一言であっさりと場が収まりそうだと感じさせる、そんな雰囲気を持っている。
「いやあ、相変わらず忙しそうだね」
Aさんが笑いながら声を掛けた。
「いや、Aさんに比べれば大したことないですよ」
都丸氏がやはり笑顔でそう言った後、Aさんは早速私を紹介してくれた。
「えーとね、彼がアンカーの工藤君。金田一について、なかなか詳しいんだよ。さとうさんにする質問も考えてくれたんだ」
「あ、どうも。都丸と申します」
都丸氏がポケットからごそごそと名刺入れを出し、そこから慣れた手つきで名刺を取って、私に差し出す。
「あ、工藤と申します。よろしくお願いします。すいません、僕、名刺持ってないもので。あの、MMR、いつも楽しみに読んでます」
「どうもありがとうございます」
都丸氏は深々と頭を下げてくれた。Aさん曰く、「キバヤシ君と並ぶ、講談社きっての優秀な編集者」なのに、なんて腰の低い人なのだろう。私と都丸氏のやりとりに、AさんとKさんが笑う。
「それじゃ、どうしようか。車2台ぐらいで行こうか?」
「そうですね。Aさんはさとうさんのご自宅、ご存じでしたっけ?」
「いや、知らないんだよ。都丸君は我々とは一緒に行かないんだよね?」
「ええ、ちょっと遅れて行くことになると思うんで……。とりあえず、地図描きますからそれを頼りに先に出発してください。時間もそんなに余裕がないんで」
「わかった、じゃあ、今日はよろしく」
こうして、私とAさん、Kさんは講談社からタクシーでさとうふみや邸を目指すこととなった。
「工藤君、青い鳥文庫のプロット考えてくれた?」
助手席に私、後部座席にAさんとKさんという状況でAさんが私に声を掛けてきた。
「いやあ、まだちょっと……」
正直、この時点ではAさんの真意を計りかねていたため、Aさんの言葉に舞い上がらず、落ち着いて状況を判断していこうという姿勢だった。
この時点での私のように、新人賞を通過しなくても編集者に声を掛けられている人間はたくさんいるのだ。文章が書けそうな漫画家だったり、エッセイストだったり、ゲームデザイナーだったり、新人賞でいい所まで行った人だったり、今なら私のようにホームページ作家の立場で声を掛けられたという人もいるだろう。
しかし、そこからデビューとなるとやはり難しい。編集者もプロだ。いくら、こいつはなかなか見所があると思っても、長い間一緒に仕事をしても、作品が面白くなければ、商品として成り立たないと思えば、デビューさせることは絶対にない。そして、書き手が挫折してしまったら、なんだ、結局こんなもんか、もう駄目だなと判断して連絡をすることもない。
書き手側からすれば、声を掛けてもらった編集者から見限られたら、デビューの道は閉ざされる、つまり、失敗は許されないのだ。
Aさんの誘いはあまりにも魅力的だったが、安易な言葉は返せなかった。
「工藤君はやっぱりミステリーが好きなんだよね」
「そうですね、まあ、ミステリーに限らず不思議な話は好きです」
「最近読んだミステリってなに?」
「最近読んだやつですか?」
金田一の執筆が大変で、本などほとんど読んでいなかったが、そう答えるのもあれなのでとりあえず記憶を遡りながら名前を出した。
「綾辻行人とか、ですね」
「あー、綾辻さんは僕も好きですよ」
Aさんの言葉の後、Kさんが言った。
「すいません、話全然違うんですけど、青い鳥文庫の初版ってどれぐらいなんですか?」
「……うーん、初版部数は一概には言えないんだけど、たとえば、はやみねさんなんかはかなり多いよ。重版分も多いし。児童向けはどこの出版社も苦戦しているけど、青い鳥文庫はかなり優秀なんじゃないかなぁ」
「それじゃ、工藤君が青い鳥文庫からデビューしたら奢ってもらわないといけないですね」
Kさんはそう言って笑った。
