第10回 アメリカ横断ウルトラクイズ挑戦記(1/4)

サイト掲載日 1998年8月31日 エッセイ

 昔、日本テレビ系列で『アメリカ横断ウルトラクイズ』という、まさにアメリカを横断しながらクイズで闘っていくという番組があり、まだ子供だった私はいつかあれに出たい、せめて機内クイズまでは辿り着いてタラップを降りたいとそう思って、市販のクイズ本などを読み漁っていました。
 初参加は福留アナから福沢アナに司会が交代した年。確か一問目敗退だったような覚えがあります。それから3年ぐらい、ウルトラクイズは開催されませんでした。なんでも不景気でスポンサーが付かない、もうやらないかもという噂を聞き、「あー、あれが最初で最後なのかなあ」とがっかりしていると、巨人戦のテレビ中継で「ウルトラクイズ参加者募集のテロップ」がゆるゆると流れていくのを発見。狂喜乱舞して応募し、私は前回同様、一人で東京ドームに行きました。
 これはそのときの、一応、闘いの記録です。


 私にとって、アメリカ横断ウルトラクイズが行われる日の朝は早い。それは6年前、レフトスタンドの○側席にいて、オーロラビジョンに映し出された×を呆然としながら見た日と、あの時の雪辱を果たしに出掛けた今日と、なんら変わりがなかった。

(えーと、パスポート……入ってる、参加はがき……入れた。リップクリーム……ポケットに入ってる。携帯、後ろのポケットに入れた。よし、それじゃ行くか)
 私は厳かに出発準備を整え、青いリュックを背負い、まだ夜が明けて間もない街を颯爽と旅立った。
 前回同様、今回も独り。
 しかし、それはどうでもいい。なにしろ究極の純愛映画「タイタニック」をも独りで観に行った男である。こういうイベント事に、独りで行ったことを後で話すと、「なんだぁ、あたしに言ってくれれば、一緒に行ってあげたのにさぁ」などと言ってくれる女性がたまにいるが、その後の「それじゃあ、今度、電話するね」の今度がまったくない人間の言葉など信用出来るわけがない。

 最初、JRで東京ドームのある水道橋へ行こうとしたのだが、なにやら踏切でバイクと列車がぶつかったということで、待てど暮らせど電車が来る様子がない。
(何も日曜の朝から事故起こすことないだろうに……)
 幸いにして、私がいた地元駅からは、いくつかの電車が東京方面に向けて出ている。私は動いている電車に乗って東京へ出て、総武線に乗り継いだ。そして15分後。
(おー、着いた着いた)
 電車は水道橋駅に無事到着した。周りを見ると、昔に比べ一般の人たちが数多く参加する様子が見受けられる。以前までは、“いかにもクイズ研究会です”みたいな人々が大挙して参加していたのだが、今年は久々の復活ということもあり、傾向が変わっているのかもしれない。
 電車の中で興奮気味にうろうろしていたお父さんを擁する家族とともに、駅の階段を下りる。
 その後、私はとりあえず、小用を足すためにトイレへと寄り(地元駅で飲んだリアルゴールドが下りてきたと思われる)、その後、いざ東京ドームへと足を運んだ。例年通りなら、既に問題が発表されて掲示されている時間だ。
(ん?)
 しかし、そういう掲示はまったく見当たらない。おかしいなとキョロキョロしていると、「問題はドーム内で発表します」との貼り紙を見つけた。
(ドーム内で発表?)
 私が見てきたウルトラクイズでは恐らく初めてのことではないかと思う。参加者が少ない初期にやっていた方式で、何万人規模になっている現在、会場内発表という方法が成り立つものなのだろうか。
 そんな疑問を抱きつつ、パスポートとはがきを係員に提示してドーム内へと入った。
「はい、どうぞ」
 入ってすぐ、(かったりぃんだよ)というオーラをまといながら、黄色っぽい厚紙を配っている青年を見つけた。早速、その厚紙をもらう。
(なんだ、これ?)
 見てみると、黄色地に黒の○、黒地に黄色の×が両面に印刷されたものだった。そして、紙の下には下図のようなものがある。

1 2 3 4 5
×

↑数字の下にある「○」は切り取り線で切れるようになっている

(どういうことなのかな。まさか、第1問から第5問まで連続で発表していって、それを答えさせるってうわけじゃあるまいな……)
 そんなことを思いつつ、客席側へと足を運んだ。

(うわぁ……)

 空気の圧迫感を、圧倒されるほどに感じる。なんとも形容し難い、地鳴りが今にも聞こえそうな騒然とした雰囲気。
 恐ろしいほどの人数だ(公式発表では5万人を超していた)。参加希望人数が多いために足切りが行われたという話があったが、それも頷ける感じだ。とにかく、2階席から外野スタンドまで、ぎっしり超満員なのである。今の巨人戦では、これほど入るか疑問だ。
(とにかく、席を探そう)
 人の流れとスタンドの状況を見ると、レフトスタンドがとりあえずいい感じだ。私は流れに乗って進行方向左へと向かう。途中、不意に隣で声がしたので見てみると、前の彼女そっくりな女性がいて、しかも彼女と目がばっちり合い、(おいおい、なんでおまえがウルトラクイズなんて来てんだよ!?)と驚いたが、しばらく見ていて別人だということに気づき、ほっと胸を撫で下ろした。
 5分ぐらいだらだらと歩くと、レフトスタンドの、清原がホームランを打ち込みそうな辺に辿り着き、席についた。
 隣には極楽とんぼの太っている方みたいな男が座っている。後ろには若い夫婦らしき二人組。前にはボーイッシュな雰囲気の女性。みんなそれぞれに上気した雰囲気を醸し出しながら、グラウンドを見つめている。
(どんなクイズになるのかなぁ)
 私はもらった厚紙を見ながら、東京ドームの天井を見上げた。

 そして15分後。

 お馴染みのテーマ音楽が東京ドームにこだました。途端に、全身鳥肌が立つ。
 湧き起こる大歓声と、破壊的な拍手。それは伝説の番組に相応しい、あまりにも壮大な幕開けであった。

 アメリカ横断ウルトラクイズ、6年ぶりの復活である。

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