第10回 アメリカ横断ウルトラクイズ挑戦記(2/4)

サイト掲載日 1998年8月31日 エッセイ


 ウルトラクイズ参加にあたって、私はある作戦を立てていた。
 まず、いち早く信頼出来そうなクイズ研究会を見つけ出し(大学名にはこだわらず、やってくれそうなオーラを持つ人間をキャッチ)、基本的に彼らの後をついて行きつつ、ビデオ・ザ・ワールドからニュートンまでという幅広いジャンルの読書を活かして、わかる問題を確実に拾っていくというものだ。
 ところが、クイズ研究会がいつも持ってくるノボリは、今回から禁止されたようでまったく見当たらず、どの集まりがどこのクイズ研究会なのかまったくわからない。
 左隣にいる(私の右は階段)極楽とんぼ君は、更に隣にいる友人と固い握手などを交わし、見ていて熱いものを感じるが、やってくれそうかというと、そういうオーラはあまり漂っていない。
(こりゃ自力勝負だな)
 覚悟を決めたところで、福留さんが内野グラウンドにある台の下から登場。お決まりのウェーブも巻き起こり、場内の興奮は最高潮に達した。

ニューヨークへ行きたいかぁっ!
おーーーーーーーーっ!
どんなことをしても、ニューヨークへ行きたいかっ!
おーーーーーーーーっ!
罰ゲームは怖くないかっ!
おーーーーーーーーっ!
「……ほんとだな?」
「(笑)」

 永遠のワンパターンであるが、ドリフがコントをやる前に、いかりや長介が行う挨拶同様、盛り上がる。ちなみに私は独り参加ということもあり、気恥ずかしくて「おーーーーーーっ!」に参加出来なかった。
「それでは第1問を発表する前に、この紙の使い方を説明します」
 福留さんがそう言って、厚紙を掲げる。
「問題を発表した後、答えはこの紙で示していただきます。○と思えば○が書かれてある方を、×と思えば×が書かれてある方を、おでこの上に掲げてグラウンドに向けて出して下さい。その際、例えば1問目で○だと思ったら下にある表の、1の○のところを切り取って下さい。そうするとこうやって穴が空きます。後で、確認するためのものです。なお、この方法はインチキ(座ったまま穴を開けずにじっとしていて、いざグラウンドを下りる段階で穴を開ければいいのだ。これまでの方法ならば、第1問目の段階で○と×にきっちりと別れるため、クイズの不正解者が次のクイズに参加することは不可能だったのだが、敢えてインチキを出来る方法を使ったのは、クイズの進行をスムーズにするためであろう)をしようと思えば出来ます。しかし、私は皆さんを信じます。それでは、第1問目を発表しましょう」
 場内がざわめく。いよいよ第1問目の発表だ。緊張で武者震いがする。
「それでは問題」

自由の女神がリバティ島に建てられた時、ニューヨークで一番高い建造物となった。○か×か。
(問題文はうろ覚えなので、正確ではないと思います)

「考える時間は20分差し上げます。皆さんの意思で正解を決めて下さい!」
(……こ、これは)
 予想では、タイタニックと自由の女神を絡めてくるのではないかと思ったので、それは外れたが、そんなマイナスはまったく関係ない、ある衝撃が私を包んだ。
(知っている問題だぞ!)
 そう、私は答えを知っていたのである! 6年前のウルトラクイズの時、図書館で「『自由の女神』物語」とかいう本を借りたのだが、そこにこの事実が載っていたのだ。
 その本によると、自由の女神がリバティ島に建てられた時、ニューヨークで一番高い建造物となり、4年後、なんかのビルに抜かれるまで1番だったのである。ちなみに、エンパイアステートビルが建つのは遥か先の話だ。よって正解は○である。
(やったよ、おい!)
 6年前はまったく役に立たなかった本だが、借りておいてよかったとこの時ばかりは思った。
 周りの人間は、携帯電話をかけたり、本を開いたりと大忙しである。後ろの夫婦は、アメリカが独立した時のことを一生懸命話していたが、アメリカの独立が自由の女神の高さにどういう関係があるのか、私にはいまいちわからなかった。

 そして20分後。

「さあ、それでは答えを発表します。自由の女神が建てられた時、ニューヨークで一番高い建造物となった。○か×かっ!」
 答えがわかっていても鳥肌が立つ。
まーるまーる!
ばーつばーつ!
 それぞれの祈りにも似たコールを受けて、福留さんが叫ぶ。
答えはこれっ!

まる

よおおおおおおおしっ!!!
 今まで孤独のオーラをまとっていた男が、渾身のガッツポーズを決める。それは、ドゥンガがオランダ戦のPKで見せたものよりは地味だったが、握った拳は力強かった。
 ウルトラクイズ3回目の挑戦にして初めての第1問突破である。問題の答えを知っていたとは言え、嬉しいことに変わりはない。
「○のみんな。おめでとう!」
おおおおおっ!!!

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