第14回 独りで行けるもん(1/3)
サイト掲載日 1999年9月1日 エッセイ
みんなで行った時は楽しかった、二人で行った時は楽しかった、今、自分一人しかいないけど、またあの楽しさを体験したい。もしかしたら一人でも楽しいのではないだろうか……。そんな風に考える人はあまりいないかもしれませんが、普段複数の人間で行っている場所に一人で行ってみたらどうなるんだろう、というか、入っても大丈夫なんだろうかという好奇心を抱く人はいるかもしれません。
今回は、あまり一人で行く所ではないだろうという場所に実際に一人で行ってみた時の話です。
今回のチャレンジ 独りカラオケ
独りで来たと告げた時の店員の反応
- 「すいませんが、もう一度お願いします」
時間と費用
- 一時間半で945円
自分の他に、独りで来ている人
- 見あたらず
思ったより悪くない。店に入る前、駐車場に並ぶスポーツカーと、自分が乗っている婦人用自転車(フジスーパーで19800円)を対比させながら、(堕ちるところまで堕ちたって感じだな)と、かなりの自己嫌悪を覚えたが、帰りは清々しさを感じながら、気持ちよく自転車を走らせることが出来た。
店員の対応に関して、「独りなんですけど」とわざわざ人差し指を一本突き上げて言っているのに、「すいません、もう一度お願いします」はないんじゃないかと思ったが、終了10分前の電話をかけていた所だったので、本当に聞き取れなかったのかもしれない。
1時間30分唄ってわかったことは
- 序盤にバラードを選択するのは危険
《理由》
テンションが上がりきっていないので、「愛の歌を唄っている自分は、でも独りで来ている」という現実に潰される。失恋した彼女との思い出の曲を1曲目などというのも、絶対にやめた方がいいだろう。
- ハモリのエフェクトは絶対かけるべき
《理由》
手拍子や合いの手などは一切入らないわけで、賑やかさを演出するためにハモリのエフェクトは必要である。特に壊れかけてくる中盤、バラードでONにすると、かなり自分に酔うことが出来る。また、自分の歌声がダイレクトに耳に届くので(カラオケの機械から、ハードディスクがカリカリいう音まで聞こえてくる)、自信を保つためにもかけた方がいい。
- 1~3曲目は、得意な曲で気持ちを盛り上げた方がいい
《理由》
普通だったら、お得意の曲は最後の方に持ってくるものだが、独りの場合、そんな演出をしても意味がない。寂しさを打ち消すためにも勢いに乗るためにも、いきなり十八番で勝負するべきだ(気持ちよく終えるために、最後も十八番にしよう)。その際、ミディアムテンポの曲より、アップテンポの曲の方がいいだろう。
- 唄いなれていない曲はやめた方がいい
《理由》
自分独りということで、初めての曲などを練習したくなるが、失敗した場合、(無駄な時間を過ごしてしまった……)という喪失感に襲われる。慰めてくれる人間がいないため、立ち直るまで結構時間がかかる。よって、確実に唄い通すことが出来るとわかっている曲を選択していきたい。
だいたい、こんなことである。
波に乗れさえすれば、そこそこ楽しめるし、隣の部屋にいるカップルの姿が直接目に入るわけでもないので、虚しさも思ったより感じない。
「みんなで来る時のために、独りで練習しているんだ」という気持ちを持てれば、まったく問題なしだ。
次回は独りボウリングに挑戦する予定です。