第3回 國學院大学で週刊少年ジャンプを読んだ日(1/5)

サイト掲載日 1997年10月17日~21日 エッセイ

 今回の話は、私が19~20歳の時に経験した大学受験の話です。これもサイトにアップする遙か昔にワープロで打って、友人に読んでもらったものです。話せば済む(実際に話した)ものを、サイト持ちでもない当時になぜわざわざ書いたのか、今となってはよくわかりませんが、自分の人生を振り返る上ではよかったかなと。当時の僕の、あまりに楽観的な妄想ぶりに、様々な反響がありました。


 私は、自慢ではないが高卒である。
 高3のとき、周りがみんな大学へ行くというので、あまのじゃくの私は「じゃあ、俺は専門学校へ行く」と進路を変えてしまった。
 そして、「これからは『スペシャリスト』の時代だよ」とクラス内で布教活動を行い、大学進学を決めていた友達数人の進路を、「俺、工藤に言われて目覚めたよ」という言葉を受け取りながら変えさせてしまった。
 その、他人の人生を変えた張本人はというと、専門学校を一カ月で自主退学(通ったのは3日間)しているのだからどうしようもない。あまり、思いつきで大事なことを決めてはいけないということがよくわかった。
 さて、私にとって学歴などどうでもいいことなのだが、過去一度だけ、大学を受験したことがある。
(人生に一回ぐらい、大学受験の思い出欲しいよなぁ……)という貧困な発想で、私は受験料2万5千円をどぶに捨てる決意をした。確か19才の時であったと思う。
 この時の記憶は時が経つにつれてだいぶ薄れているのだが、この間、原稿を整理していたら、『國學院大学で週刊少年ジャンプを読んだ日』というタイトルでその時の記録が残されていた。確か書いたのは、23ぐらいの時だったような気がする。
 ネタ的にここにぴったりだということで、週末まで、この作品を数回に渡って掲載していきたいと思う。古い作品なので稚拙な部分が多く、その辺は修正を加えながらいきたい。
『いかに楽に大学へ受かるかということに対しての、怠惰な挑戦』とでも副題を付けたいような内容なので、今、受験生の方々にとっては反面教師的なものになるだろう。
『これが悪い例なんだな』というように参考にしていただければ、書いた私としても幸いである。


『國學院大学で週刊少年ジャンプを読んだ日』

 気がついたら大学受験を決意していた。
 19歳の秋、私は國學院大学で変わった入試をしていることを知った。
 一教科入試。
 それも国語だけ。
 私は感動した。今までも変わった入試体系を持つ大学はあった。例えば亜細亜大学。一芸一能入試。受けたいと思った。しかし、私には人に誇れるような芸がない。強いて挙げれば、円周率を小数点以下50桁まで暗唱出来ることだが、こんなことはそこそこの記憶力さえあれば誰でも出来る。これじゃとても受からないだろうと、亜細亜大学受験は断念した。
 しかし、國學院大学の場合、文学部に国語一教科で行けるのだ。まさに私のために用意されたような入試だ。
 私は早速、古文と漢文の参考書を買った。
 が、ここで早くもミスが出る。基本的に怠け者の私は、“古典解釈・魔法のグリデン解釈”などというかなり人を喰った名前の参考書(というかテクニック本)を購入してしまったのである。
 内容は実に簡単だ。文章の中に含まれている助動詞一つで、文意を解釈してしまおうというものである。
 例えば、文の中に「や」が入っていたら疑問形の解釈となっている選択肢を選べと書いてある。こんな感じですべてのテクニックを覚えていくと、解釈だけで点数が8割取れると書いてある。凄すぎる。こんな、原付の教習本より簡単な本の内容を覚えるだけで、解釈の点数が8割も取れるのだ。当時、まだ古典文学にはまっていなくて、源氏など読んだだけで頭が痛くなっていた私は、大変心強く思った。
 そしてこの本には、『究極の裏技』として7つのテクニックが紹介されている。どれもこれもいろんな意味ですごいのだが、中でも一番いっちゃってるやつを紹介しておこう。

 難しくて手がつけられないような「解釈」が出たら、「わかりやすい語」、「わかりやすい表現」を使って訳している選択肢を選んで正解とせよ。
(基準は小学5年生。すなわち、小学5年生がわからないような語や表現を使っているものは「正解」ではない)

 心強い。わからなかったら自分の思考を幼くすればいい。なんと素晴らしいテクニックだろうか。ほんとにこれで通用するなら。
 基準を小学6年生ではなく小学5年生としている理由が今一つわからないが、このテクニックさえ知っていれば、どんなに難しい内容の解釈が出ても大丈夫だ。まさに魔法だ。
 もう一つ、古文の参考書を買ったが、そちらの方は難しくて手をつけられなかった。この本こそ、古典参考書の名著の誉れ高い、「古文の読解」だったのだが……。
 漢文はまったくやらなかった。読んでもよくわからないし、どうして大して出ないだろうと思っていたからである。一・二点とレ点さえ知っていれば、そこそこ点数が取れるに違いない。それに「矛盾」の話や「五十歩百歩」の話も知っている。完璧だ。
 私は早速学校に電話をし、調査書を作ってくれるようにと依頼した。

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