第18回 軍艦島上陸の記録 棄てられた島へ(1/5)

 私と一心同体といえるどこかで聞いたことのある人の手記より。

 軍艦島(正式名称 端島)。長崎へ行くと決めた時、どこか面白い場所はないかとインターネットをうろうろしていたらこの名前を見つけた。
(軍艦島か。硫黄島みたいな所かな)
 そう思いつつ、専門のサイトを見てみると、異様な写真を目にした。
 建物はいくつも建っているのに、人が誰もいないのである。
(なんだろう、ここは)
 説明のしようがない、ざわざわとした妙な気持ちを抱きながら文章を読んでいくと、以下のことがわかった。

  • もともとは三菱所有の炭坑があった島で、1974年、閉山を機に人が去り、無人島になった。
  • 一時期、7ヘクタールほどの面積に5000人を超す人々が住んでいて、世界一の人口密度を誇っていた。
  • 日本初の高層アパートが建てられた。
  • 3年前、島で火事があり、現在は上陸禁止になっている。

 建物があるのに人が住んでいない「棄てられた島」。哀愁と奇異。どちらに惹かれているのか自分でもわからなかったが、なんとかしてここに行く方法はないだろうか、私は考えた。
 そして、ある方を探し出し、強引に頼み込み、連れて行ってもらえることになった。
 このページでは、2000年6月2日、私が軍艦島に上陸し何を見たかを、余すことなく書いていきたいと思う。

 というわけで、手記と当日撮影されたビデオテープをあずかった私がサイト上でまとめるという形で発表することになりました。


部屋に転がっているウクレレ瓦礫

軍艦島外観

海から見た学校島の中央部

 海から見た学校。窓ガラスはほとんど割れている。右の写真は島の中央部

[動画]船から見た軍艦島

船から見た軍艦島

 港から船で10分から15分ほど行くと島が見えてくる。黒く変色している高層アパートと現役稼働中の灯台が中心にあって、脇に学校がある。
 正直な話、あまりの存在感にしばし見とれてしまった。遠目にも誰も住んでいないとわかり、それでいてあちこちに建物が見える島。なんなんだこれは、というのが率直な感想である。上陸しなくても、軍艦島周遊だけでかなりの刺激を受ける人間もいるだろう。
 建物が平面だけに建っているのならばそれほど変な感じはしないのだろうが、実際は平地だけではなく、中央の盛り上がっている部分にも高い建物はあり、軍艦島という呼び名以外に考えられないという外観になっている。私は見ていて、「空にそびえるくろがねの城」で始まるマジンガーZの主題歌を思い出した。

軍艦島上陸の記録 裏話その1

 軍艦島へは渡島禁止ということになっているので、連れて行ってくれる人を探すのが大変だった。なんとか運んでもらえそうな方を見つけて電話とメールでお願いした。わけのわからない人間は運べないとのことだったので、住所、氏名、年齢、職業、電話番号、携帯番号、全部教えてなんとか了解を取りつけた。途中で「建築関係の方ですか?」と聞かれたのは、どうも、コンクリートの腐食具合やら高層アパートの密集具合やらを調べるために建築に携わっている人間がよく島を訪れるかららしい。また、「鈴木あみさんのファンですか?」とも聞かれた。彼女のファンたちが、まだ放送前の、彼女の主演ドラマの舞台を訪れたいと随分電話したようだ(人数が多く、連れて行ってもらえなかったらしいが)。
 船で軍艦島へ行く途中、「頭を下げろ、人に見られないようにしろ」と何度か言われた。暗黙の了解みたいのはあるものの、やはり大っぴらに運ぶのは無理だということだった。ビデオは軍艦島にかなり近づいた時点から回し始めた。

軍艦島上陸

学校正面学校を背にした見た壁

 上陸すると学校のグラウンドに出る。雑草が生い茂る中、数十年前に植えられたと思われるソテツが上陸者を出迎えてくれる。

[動画]上陸直後

上陸直後

※注意 音声ありません。視点がかなりぶれますので、乗り物酔いしやすい方、徹夜明けなどで疲れている方、今現在体調がすぐれない方は出来るだけ見ないで下さい。

 船着き場というより、単なる出っ張りのような所へ船首を向け、そこから上陸する。波が穏やかな日は問題ないと思うが、波が高い時は相当苦労するだろう。
 コンクリートの階段を数段上ったあと、今度は金属製の梯子を上らなければならない。私ははっきり言って高所恐怖症なのでここが一番大変だった。軍艦島はその辺の島のように砂浜があるわけではない。堤防のようになっているコンクリートの壁があり、その上に乗っているような感じだ。よって、階段を上っている途中にふと下を見ると、堤防の高さ+梯子の高さが加わってかなり下に海が見える。落ちても死ぬことはないと思うが、高い所が苦手な方は諦めた方がいいと思う。

軍艦島上陸の記録 裏話その2

 孤独な雰囲気を存分に感じられると思いがちだが、実際は釣り人がいる。私が目で見て確認したのは40歳ぐらいの男性一人だけだが、話し声で壁の向こう(波を避けるためか、島はコンクリートの壁に覆われている)に更に一人いるのがわかった。彼らは漁船(?)で来ているらしい。最初見た時、(ああ、軍艦島は釣り場って聞いたけど、本当にいるんだなぁ)と思った。向こうはリュックとビデオカメラ持って、ぜえぜえ言っている私を見て、「こいつはいったいなんなんだ?」と思ったことだろう。
 海にはクルーザーが何隻か浮かんでおり、離れていたのでわかりづらかったがやはり釣りをしていたようだ。更にどこの組織が出しているのかわからないが、監視船のような船が行ったり来たりしていた。

公衆トイレ

トイレ外観男子トイレの扉

 学校の真向かいに公衆トイレがある。もともとあったのか、それとも最近作られたのか判別つかなかった。入ってすぐ左に男子用と女子用の個室が並んでおり、ベニヤ板の扉に「落ちるな キレイに 男子用」「落ちるな キレイに 女子用」と赤いペンキ(もしくはラッカー)で書かれている。扉には木片を使った鍵が付けられており、この木片の状態から見て、ベニヤの扉はかなり最近取りつけられたものだと推測される。恐らく、鈴木あみ主演のドラマを撮影した時ではないか。
 女子の個室を開けることはマナー違反なので、男子個室の扉を開けさせてもらったが、トイレットペーパーが2つほど置かれていたのにはびっくりした。

学校外観

学校側面斜めから見た学校

 建物の土台は海水で浸食されており、いつ崩れてもなんの不思議もない。

 軍艦島で現在、もっとも存在感があるのが、上陸して最初に目に入る「学校」だろう。ここを見ずして軍艦島は語れない。7階建て、教室は30以上という今でも稀な大きさ、そして、上陸者による無数の落書き、残されたままの教科書、教師の出勤表、生徒の成績表。黒板には時間割などが書かれており、軍艦島においてもっとも「人」を感じる場所である。
 海側なのにもかかわらず、建物外面の損傷は少ない。窓ガラスはほとんど割れているものの、高層アパートと違って何かがはずれて落ちかかっているというようなことはない。他の建物と比べると学校はかなりしっかりと作られているようで、体育館に備え付けられた階段など現役でも充分通用するような状態だった。
 学校前方にあるグラウンドはほとんど雑草で覆い尽くされている。だが、そのわりに虫は少ないように思えた。草を踏んで大量に飛び上がることも、朽木を踏んでゴミ虫が右往左往することもなく、ハエが何匹か飛んでいる程度だ。蚊もいたが、私は結局、一カ所も刺されなかった。

学校1階

校内の壁に書かれた落書き

[動画]学校の廊下

学校の廊下

 入り口の右に水飲み場がある。左には生徒が作ったと思われるタイル画(島の周りをカモメが飛んでいるという構図。タイル画は他に2カ所で確認出来る)。柱には落書きがいくつかあり、壁には外国人の名前も見受けられた。1階で確認出来た落書きは以下の通りである。

  • 後藤
  • 26/9/98 Nick ○○○○○○(判別不能。もう一人、外国人の名前)
  • 平成10年 ○○○○○
  • 2000年 吉原
  • 1992.8.29 東洋大学探検部 南雲1万5千円
  • さいき 1992
  • BLAM! NO1. PUNK BAND 96’9月22

 入り口から見て一番左の特別教室は、水道と薬瓶があったことから考えて恐らく理科室であろう。
 外面と比べて教室内の損傷は相当激しい。床板は大部分腐っており、割れた窓ガラスがそこら中に散らばっていて、しっかりとした靴を履いていないと間違いなく怪我をする。黒板は全損。トイレもめちゃくちゃ。
 ある教室にオルガンが残っていたのが印象的だった。

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