第18回 軍艦島上陸の記録 棄てられた島へ(2/5)


社宅の廊下正面から見た部屋

学校、その他の階

[動画]図書室と音楽室?

図書室と音楽室?

※注意 音声ありません。視点がかなりぶれますので、乗り物酔いしやすい方、徹夜明けなどで疲れている方、今現在体調がすぐれない方は出来るだけ見ないで下さい。

 ビデオテープのデータが吹っ飛んだせいで、1階以外の階に何があったかというのは正確に書けないので、印象に残ったものだけを記していこう。

 まず、驚いたのが生徒の成績表。評価は5段階制だったようだ。なんで、こんな大事なものを置いていったのかよくわからない。ある本にも書いてあったが、ひょっとしてまた戻る(戻れる)と思っていたのかもしれない。
 職員室らしき場所に残っていた教師の勤務表にも驚かされた。この月は何日働いて、何日休んで、何日出張に行った、そんなようなことが細々と書かれてある。

 当時の授業風景が思い浮かぶようなものもたくさんあった。1階の黒板は全壊だが、上の階にいくほどちゃんと残っており、いくつかの熟語(最後の授業が国語だったのだろう)や、時間割表、大学合格者(?)の名前などが書かれていた。また、そろばんを教えるのに使ったと思われる、巨大そろばんもあった。

 黒板には上陸者の落書きもたくさん書かれてある。○○参上! と相合い傘はそこかしこの黒板で見受けられた。
 ○○大学(○○部)上陸記念というのも多く、覚えているだけで、

  • 早稲田大学サイクリング部
  • 長崎大学(長大と略されている)
  • 大阪芸術大学(写真学部だったような)
  • 神戸大学

 の4つあった。
 また、卒業生が同窓会を定期的に行っているらしく、出席者の名前が教室後ろの壁に刻み込まれていた。

 7階には集会場のような場所がある。体育の授業で使用されていた所かもしれない。
 ここに、数人の人間たちが何泊かしたようで、たくさんの缶詰とあきたこまちの袋(多分、5キログラムの)が捨てられていた。缶詰はわかるとして、あきたこまちの袋には失笑させられた。ここで米を炊いたということだろうか。
 学校にはライターや煙草の空き箱(かなり新しい)もたくさん捨てられていたが、校舎内で火を使うのはかなり危険だと思う。今度どこかが火事になったら、もう絶対、いかなる手段でも上陸出来ないようになるだろう。

軍艦島上陸の記録 裏話その3 携帯電話

 船に乗せてくれる人と話した時、「携帯電話を忘れずに持ってきてくれ」と言われた。(携帯電話? 待ち合わせのためかなんかかな)と思いながら、ジーンズの後ろのポケットに入れていった。
 渡島して携帯電話のことはすっかり忘れていたが、ふと取り出して見てみると、なんとアンテナが3本立っている。ドコモならまだわかるが、私の携帯はシェアぶっちぎり最下位のツーカーだ。J-PHONEのアンテナを借りていたのだろうが、そのアンテナがどこにあったのか未だに謎である。
 実際に話せるかどうか、試しにめぐちゃんにかけてみたらちゃんと通じた。
「あ、工藤さん、久しぶり! え、今どこにいるの?」
 と聞かれて、
「無人島」
 と答えたのは楽しかった。

 結局、緊急のために使うことはなく、私は無事迎えの船に乗ることが出来た。

体育館

体育館の壁に描かれた虎の絵

[動画]体育館

体育館

※注意 音声ありません。視点がかなりぶれますので、乗り物酔いしやすい方、徹夜明けなどで疲れている方、今現在体調がすぐれない方は出来るだけ見ないで下さい。

 土台に「WELCOME」とスプレーで書かれている。その言葉に従って体育館に入ると、陥没した場所が数カ所見つけられる。雨漏りのため、板が腐っているらしい。
 陥没した場所に限らず、どこを踏んでも足が抜けそうで怖かったが、勇気を出して館内を散策してみた。
 目についたのは、壁にある虎の絵。大きさはかなりのもので、梯子を使って描いたと思われる。最近のものではなく、数年、もしくは十数年前の作だろう。
 体育館に限らず、学校にはいくつかのアートがあるが、正直、見ていて心に迫ってきたものは一つもなかった。虎、キン肉マンのパチ物(校舎7階)、キングギドラらしき怪獣(校舎7階)……軍艦島まで来て、なんで、わざわざこんなものを描いたのか。
 女性が残した「また来るよ」という文字が印象に残った。

 体育館の2階は壊滅状態である。床はあるが、あるというだけ。足を踏み出した瞬間に抜けそうな状態で、1階よりもひどい。ただ、それなりの重さであろう台(朝会で、校長が乗るような)が3つほど乗っていたので、見た目ほど腐食は進んでいないのかもしれない。

道と階段

階段建物と建物の間

[動画]建物の間を歩く

建物の間を歩く

※注意 音声ありません。視点がかなりぶれますので、乗り物酔いしやすい方、徹夜明けなどで疲れている方、今現在体調がすぐれない方は出来るだけ見ないで下さい。

 建物と建物の間にある通路には、ガラスの破片と石、木が散らばっている。それとペットボトル。サントリーのウーロン茶からサプリまで、何種類も落ちている。また、軍艦島に人がいた当時、捨てられたゴミらしきものもいくつかあった。古いコカコーラの瓶が、数の多さでかなり目立っていた。
 不思議だったのは、住居のそばにあった女性用の靴。一足だけなら、単なるゴミだが、十数足固めて捨てられていた。いったい、いつ、どういう目的で捨てられたものなのか、まるで見当がつかない。
 圧倒されたのが、台風によって(あるいは、台風で生じた波で)吹き飛ばされたと思われる堤防の破片だ。家ぐらいとは言わないまでも、相当な大きさのコンクリート片がゴロゴロしている。台風の威力をまざまさと見せつけられた。
 古い建物はレンガをコンクリートで固めて作られていたようで、レンガがあちこちに落ちている。

 階段は、まったく破損していないものと、ひびが入って危険なものがある。位置ではなく、作られた時期でわかれているのではないか。

軍艦島上陸の記録 裏話その4 猫

 鳥と虫ぐらいしかいないと思われがちな軍艦島だが、なぜか猫がいる。
「会えるといいね」
 船に乗っている時、送ってくれた方にそう言われた。
「餌とかどうしてるんですか?」
 と聞くと、
「釣りしている人があげているんだよ。だから、結構太っちゃって。でも最近はどうなのかな。しばらく見てないからわかんないな。だから様子見てきてよ」
 そう言って笑った。

 是非会ってみたかったが、残念ながら姿を見ることは出来なかった。

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