身の回りの出来事系エッセイ-21 漢字は難しい

1997年12月7日執筆


 小学生の頃から、漢字の「読み」だけには自信があった(「書き」はまるで自信がなかったが)。
 しかし今まで、生活空間にありながら、どうしても読めなかった漢字(熟語)が3つだけ存在した。それは「こんなの読めなかったの?」と他人に嘲笑されても怒れないようなレベルのものである。
 まず、小学生の頃、

 月極駐車場

 この「月極」がわからなかった。
(げっきょく……)
 どうしてもそうとしか読めない。
(げっきょくちゅうしゃじょうってなんだ?)
 友人にも聞いてみたが「わからない」という。
 私は散々考えた挙げ句、地球の衛星としての月と関係があるのではと推測し、最終的にNASAの関連会社専用の駐車場と判断した。そう考えると、「月極駐車場」が街中にあるのも理解出来る。なんと言っても、NASA系列なのだから、社員もたくさんいることなんだろう。私はそれで自分に納得した。
 ちなみに、この認識が間違っているとわかったのは、小学校6年生ぐらいの時である。

 そして、中学の時にわからなかったのが、

 若干名

 新聞の求人広告などで目にするこの言葉は、かなり私を悩ませた。
(わかせんめい……わかせんめいってなんだ?)
 千ではなく、干なのに、私の目には「千」としか映らなかった。名という字が後ろにあることで、その前にある字は「数字」を表していると思い込んでしまったのである。まさに推理小説で言う「ミスリード」。
(求人広告に載っているっていうことは、やっぱり募集のことに関しての言葉なんだろうな……。となると、若い人1000人ってことかな?)
 この認識も、しばらく私の中で正解となっていた。
 ちなみに、植田まさしの4コマ漫画で大学生が私と同じように「若干名」を「若いの1000人」と認識するというギャグがあったが、私は笑う以前に、頷くばかりであった。

 そしてつい最近まで読めなかった言葉。それは、

 兎に角

 これは難問だった。人の文章を読んでいるとたまに出てくるのだが、私にはどうしても『うさぎにつの』としか読めないのだ。
(なんだろう、うさぎにつの、って……)
 そういう言い回しがあるのかなとも思ったが、私の人生振り返っても、人が「うさぎにつの」なんて言っているのを聞いたことがない。
(うさぎにつの……)
 私はうさぎに角が生えている図をイメージする。もしかしたら、論語とかに載っている教えなのかもしれない。うさぎに角を生やすことで、何かしらのメリット、デメリットがあるんではないか。
 しかし、うさぎに角を生やしても、「無意味」という言葉しか出てこず、これでは「蛇足」と同じである。
(うさぎにつのなぁ……うさぎだろー? うさぎに角生やしてもなー)

 結局、兎に角が、「とにかく」だとわかったのはつい半年ぐらい前のことだ。月極が「つきぎめ」、若干名は「じゃっかんめい」。
 まあ、わかればなんてことないのだが、いい年になると、「ねー、うさぎっていう字に、角って書いてなんて読むの?」なんて人にはとても聞けなくなる。

 現実に、今までわからなく、人には恥ずかしくて聞けなかったけど、このエッセイを見たことで、「兎に角」の読み方がわかったという人も結構いるような気もするのだが……。思い過ごしですか?(笑)

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