身の回りの出来事系エッセイ-46 霊感少女

1998年12月2日執筆


 修学旅行時になると、突然、人気者になる類の人たちがいる。
 小学生なら早々とちん毛が生えた男子、中学生なら上の階にある、女子の部屋に侵入してトランプをする男子、高校生だと地元暴走族の皆様と大乱闘を繰り広げる、柔道部員の皆様などがそうだ。
 だが、小中高と一貫して人気者の方たちがいる。
 俗に言う(というより、自分で言ってる)『あたしって霊感が強いの』さんである。

『あたしって霊感が強いの』さんには、“基本的に明るい人”と“基本的に暗い人”の2タイプがおり、修学旅行になるとここぞとばかりに活躍するのは後者のタイプである。
 その言動は、修学旅行先に向かうため、新幹線に乗った辺りから怪しくなってくる。

「ねぇねぇ、今富士山見た? 超きれいだったよね!」
「うん、綺麗だった!」
「あたしの友達、昔、富士の樹海に入って出られなくなったことあるんだって」
「え、それって超やばくない?」
「うん、やばかったらしいよ。5時間後に、地元の消防署の人に助けられたらしいけど」
「あははは、超うける」
「……あれ? **ちゃん、どうしたの? 元気ないじゃん」
「……うん」
「どうしたの? 気分悪くなったの?」
「そうじゃないんだけど……なんかね」
「うん?」
「トイレの方から、変な『気』みたいのが漂っているのがわかる……」
「えー!? 嘘、まじまじ!?」
「うん……なんか……あたし、恐い……」←ここでなぜか泣き始める
「あ、**ちゃん、大丈夫!?」
「……(嗚咽を漏らす)」

 この異変を目ざとく見つけた広報係の女子(キューピッド役なども担当)より、『あたしって霊感が強いの』さんの言葉が皆に伝達され、車両はざわめく。

「ねー、なんか**ちゃんが霊を感じたんだって!!」
「嘘、まじで?」
「トイレの方から感じるんだって!」
「うそー、超恐い!!」
「ほら、**ちゃん泣いちゃってるもん!」
「霊ってどんな奴?」
「うん、地縛霊じゃないかって……」
「地縛霊って自殺した人の霊とかでしょ? うわぁ、あそこのトイレ行くのやめよう」
「なになに、**ちゃんって霊感強いの?」
「うん、なんか最近も、死んだおばあちゃんと話したんだって!」
「うそー……」

 こうして、『あたしって霊感が強いの』さんの言う、気の出ているトイレは誰も使わなくなる。

 私は別に霊や霊感を否定するつもりは毛頭ない。が、なぜ『あたしって霊感が強いの』さんは、人が大勢いる場所でしかそのことを語らないのか不思議に思う。
 更にわからないのが、突然、泣き出したりすることだ。しかも、この場合も、人が大勢いる場所に限ってである。
 私としては、この辺、どうも駆け引きの匂いを感じて仕方がない。

『あたしって霊感が強いの』さんの中に1%の本物がいたとしても、99%は『あたしって、平凡に見えるけど実は特別なのと思いたい』さんだと考えられる。
 小説や漫画のように、前世が織田信長であったり、霊感があったり、UFOを見たりすれば、それはそれで楽しいかもしれない。そしてそういう人は、ムーの文通欄を見て、いっぱいいることがわかった。

 だがよく見ると、これらはすべてそうだと思いさえすればいいもので、努力という行為が必要ないものばかりである。

 特別って、そんな簡単なもんじゃないだろう。多分。

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