身の回りの出来事系エッセイ-55 俺に触るなというジェスチャーについて
2002年8月21日、29日執筆
子供の頃、みんなで野球をしている時に犬の糞などを踏んだりすると、
「うわああああ、工藤が犬のうんこ踏んだぞ! 汚え、逃げろーっ!」
ってなことになった。
で、
「なんだよ、逃げんなよ」
などと言いながら追いかけていくと、みんながみんな、口からよだれを垂れ流しながら半ばパニック状態となって「バリアーっ!!」とか「ウルトラマーンっバリア!!」などと言いながら私の目の前で激しくアクションした。
図解 通称「ウルトラマンバリア」
手を高く挙げた後、壁を描くような動作を行う
汚いから触るな。嫌がらせで触ろうとしてもそれは無駄だ。なぜならバリアをしているから、おまえのタッチは無効になるのだ。ようするに無意味である。だからこっちへ来るな
という意味があったように記憶している。ウルトラマンバリアとは、ウルトラマンがピンチになった時、両手で壁を作って相手の攻撃を跳ね返すというものだったが正式名称はよくわからない。
ウルトラマンバリアの他に、
「かぎ(鍵)ぃーっ」
というのもあった。
鍵Aタイプ。人差し指と中指をクロスする。
人差し指と中指をクロスして犬の糞を踏んだり、汚い物を触ったり、学校のトイレで大きいのをした人間に見せるのだ。
鍵にはもう一つ別の形があった。それが下のものである。
鍵Bタイプ。手を握って、人差し指と中指の間に親指を通す。
これが性交を意味するジェスチャーということは中学生の時にエロ本で知った。なぜそんなジェスチャーが自分の身を守るという意味を示すようになってしまったのか。未だに謎である。
ちなみに、あまりに不条理だと思った私は、「ば、ば、バリア、バリアーっ、あ、か、かぎー、か、か、かぎーかぎー」と顔を真っ赤にして叫んでいる友人に近づき、普通に触って言った。
「こうしたらさ、意味ないじゃん。仮に俺の手にうんこが付いていたら、触った時点でおまえの服にも付くわけじゃん。バリアとかしてもしょうがないじゃん」
興奮に包まれていた場が急に醒めた。
「……そう言われればそうだよな」
「ああ」
方々に散っていた友人たちがわたしを囲むように集まる。
「とりあえず、もういいや。野球始めようぜ」
「おう、そうだな」
みんな納得して、絡めていた指を解き、グラウンドに戻って野球を再開した。
なんとなく大人の発言で場を納得させ、得意になっていた私だが、結局のところうんこは靴に付いたままだった。
それでも丸く収まるのだから、子供社会というのは大人が思っている以上に発達しているのかもしれない。
先日書いた、「鍵」の話に関していろいろな意見を戴きました。
りょう様
私の地方(大阪です)では「ぎっちょ」と言っていました。
で、女の子はAタイプ、男の子はBタイプって決まってたような覚えがあります。
M様
私の幼少時代(大阪府豊中市)は鍵Aタイプのジェスチャーをする時、「ぎっちょ」とか「えんぎっちょ」「えんがちょ」とか言ってました。
ということで、関西では「ぎっちょ」「えんぎっちょ」「えんがちょ」と言っていたようですね。縁を切るという言葉が「えんぎっちょ」→「ぎっちょ」に変化していったのでしょう。左利きという意味の俗語とは違うのではないかと推測されます。
では、うちの近所以外の関東地方ではどうだったのかというと、
はるぴん様
うちの地方(千葉県都心寄り湾岸部)では、あのバイキンを遠ざける合い言葉が「かぎ」ではなく、「えんぴ」と呼ばれていました。動作は工藤さんとこと全く一緒です。
関西とは微妙に違いますが、やっぱり、「えん」という言葉が付いてます。「えん」=「縁」だろうなぁ、やっぱり。
で、例のあの動作はいったいなんなのだという疑問に対し、通りすがり様が書き込みをして下さいました。
通りすがり様
これらの印がなぜバリアになるのかですが「卑猥な手つきをすることによって、相手の視線を逸らす。これによって魔眼(凶眼)から逃れる」と言う説を聞いたことがあります。視線には魔力があり見つめられると害を受ける、と言う呪術ですね。
なるほどという感じです。
僕の中では全部解決してしまいました。皆さん、本当にありがとうございました。