身の回りの出来事系エッセイ-57 新聞記事の書き方

2003年4月23日執筆


 最近、新聞を読んでいると考えさせられることが多くなった。特に10代の少年が刃物で人を刺したりした時の記事。たとえば、こんな事件があったとしよう。

 少年の父親が若い愛人と毎晩遊んでいて、少年の母親は心を痛めている。父親は少年とは血がつながっていなくて、少年に対して暴力をふるうこともしばしばある。愛人に貢ぐため、少年のバイト代や母親のパート代を持ち出すこともしょっちゅうだ。ある日、少年の母親が倒れた。診察の結果、末期ガンだということが判明。だが父親は帰ってこない。母親は「お父さんは本当はとても優しい人なの。だから、お父さんを恨まないで。ああなったのはお父さんのせいじゃないから……」という遺言を残して数週間後に亡くなり、少年に対して保険金がおりる。だが、父親はその保険金目当てに帰ってきた。和解をしようと歩み寄った少年を足蹴にし、仏壇にある妻の遺影に向かって言った。
「まったく、もっと早く死んでりゃ俺も借金なんてしなくて済んだんだ。この馬鹿女が」
 少年は思わず、台所にある包丁を手に取り父親に襲いかかった――。

 なんとなくドラマティックな話である。
 この劇的な話を新聞で読むとこうなる。

 20日午前10時頃、××市×× 1-10 無職 ○○△男さん(56)が自宅で包丁で刺されたと男性から通報があった。××警察署員がかけつけると、自宅の居間で○○さんが胸から血を流してうずくまっているのを発見。近くにいた長男(18)が「自分がやった」と認めたため逮捕した。なお、○○さんは病院に運ばれ全治1週間の軽傷。
 調べによると長男は、「亡くなった母親の悪口を言われて腹が立った。こらしめてやろうと思った」などと供述している。

 そりゃ確かにそうなのだが、こらしめてやろう(絶対こうは言ってないはず)という言葉の古くささと“などと”という小馬鹿にした表現が利いてものすごく陳腐な話に思えてしまう。
 だけど、これが、

 少年Aは日本の高校生を暴力で支配しようとしている。配下の人間を使い、街に出向いては次々と高校生を狩っていくA。彼の存在に耐えられず自殺を図った人間もいるほど、彼の影響力は増した。今や東京の高校生は彼の支配下に置かれた。だがある日、少年に闘いを挑んだ教師をナイフで刺した罪で逮捕された――

 という事件になると、

 20日午前10時頃、××市×× 1-10 教師 □□△男さん(48)が△×高校の校内でナイフで刺されたと男性から通報があった。××警察署員がかけつけると、○○さんが胸から血を流してうずくまっているのを発見。近くにいた少年(18)が「自分がやった」と認めたため逮捕した。なお、□□さんは病院に運ばれ全治1週間の軽傷。
 調べによると少年は、「日本の高校を統一したかった。教師を刺せば、従わない高校生も言うことを聞くと思った」などと供述している。

 青年漫画誌で連載されて13巻ぐらい出てもおかしくない、凶悪で少年たちに影響を与えそうな話が、押忍!!空手部かなんかを誤解して読んだその辺の学生が起こした馬鹿事件に見えるから、淡泊な表現もまんざら悪くないという気がする。

 深い事件を浅くするきらいもあるが、カリスマ犯罪者の事件を陳腐にするという意味において、新聞には結構犯罪抑止力があるんじゃないかと思うのであった。

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