シモネタ系エッセイ-3 気が遠くなる
1998年5月9日執筆
高校の同級生に本山君(仮名)という男がいた。
彼は頭はよかったが、とにかく気弱で、常に野球部の人間たちにパシリとして使われていた。
そんな彼がある日、日本史の授業中、野球部の井伊君(仮名)から下ネタ攻撃を受けた。
「おい、本山よぉ~ おめぇ、しこったこと(自慰行為)あんのかよぉ」
「え、え?」
「自分のあそこ、しこったことあんのかって聞いてんだよぉ」
周りから失笑が漏れる。
私を含めて、このやりとりを聞いていたみんなは、全員が「そんなことしてないよ」と本山君が言うと予測していたと思う。しかし、それは違った。
「……したことあるよ」
本山君の予期せぬ言葉に、場がどよめいた。
“まさか、あの本山君がそんなことをやっていたとは……”
“おかずはなんだろう?”
“五味岡たまきとかでやってる可能性もあるな”
などなど、各人の頭に様々な思いが去来したと思う。
「あれが出た後に、どんな気持ちがしたんだよぉ? 言ってみろよ」
井伊君の追求は容赦なく続く。
そして、数秒後。
私が、この世に永遠に語り継ぎたくなったほどの名台詞が、本山君の口から飛び出した。
「き、気が遠くなる……」
本山君と井伊君の周りにいた、私を含めた約8人は笑いをこらえるのに必死だった。しかし、両手で顔を覆いながら誰もがこう思った。
確かにその通りだ
と。