シモネタ系エッセイ-5 初めてエロビデオを借りた

1997年10月5日執筆


 今日は「レンタルビデオ屋で初めてエロビデオ借りた時」を語っていきたいと思う。

 私が初めてエロビデオを借りたのは、高校1年の時だった。この時のことははっきりと覚えている。
 友人の佐藤君と学校帰り、ガクラン姿でレンタルビデオ屋へ行ったのだが、今思うと、ガクランでエロビデオを借りようという心が実に潔い。
「俺は男だ。借りちゃ、わりぃかよ」
 この開き直りを持って、店員が女の子であってもエロビデオを借りていたあの頃。この辺の度胸だけは、見習っていきたい。
 小さなビルの2階にあったビデオ屋に入ると、いつにない緊張感を感じた。手に脂汗が出てきた。
 エロビデオを観たことはある。福永君が粗大ゴミ置き場から持ってきたというエロビデオを2000円で譲ってもらったのは中学3年の時だ。しかし、自分で借りる勇気はなかった。
 エロビデオを借りる、という時点で「人生に負ける」という気がしたのである。
 今でも味わう、自分がエロビデオを物色している横で、カップルがいちゃついているのを見たときの、あの敗北感。
(高校生が借りたら、警察に掴まるんじゃないか?)
 という気持ちもあった。
 しかし、結局ガクランでエロビデオを借りに行くのだから、若さというのは偉大な武器である。
 当時、AV女優という言葉がまだないような時代で、出ている人も30歳でセーラー服を着ているような人が多かった。なんちゃって女子高生じゃ済まされない。
 私の記憶をひもとくと、当時一番売れていたのが小林ひとみではなかろうか。小林ひとみは確かに可愛かったが、他はひどかった。

「なんかいろいろあるなぁ」
 私は佐藤君と共に、エロビデオコーナーを探索した。
 一般のビデオコーナーからは影になっている。周りはすべて女の裸。言い知れぬ背徳感を感じた。
「どれがいいんだろうね」
 今なら、『ザ・マングリ返し』とか『乳汁』とか(これらのタイトルは、今思いついたもので、実際にあるかどうかはわかりません)、なんだかものすごいタイトルに目がいってしまうのだが(ちなみにこのようなどきついタイトルものは、ろくなのがない)この頃のビデオというのはどんなに可愛くなくても女優の名前で売っていたようなところがあった。
「おい、これちょっと見ろよ」
 私は言った。

 新田恵美

 ビデオのパッケージにはそう名前が書かれていた。
「新田恵美?」
 佐藤君が素っ頓狂な声を出す。
「これ知ってるよ、新田恵利のそっくりさんなんだよな」
 私が興奮気味に言った。
 オールナイトフジのエロビデオ紹介コーナーかなんかで見たことがあった。
 爆発的な人気を誇っていたおニャン子クラブの会員番号4番(多分)の新田恵利のそっくりさん、新田恵美である。
 しかも、これがまたよく似ているのだ。アイドルに似ているくらいだから、当然可愛い。
「これ、借りるしかねえだろ」
「可愛いかなぁ、こいつ」
「可愛いよ、これ借りようぜ」
「じゃあ、とりあえずキープな」
 私と佐藤君の間で、話がまとまった。お互いそれぞれ一本ずつ借りて、それをダビングし交換しようということになっていたのである。

 さて、家に帰った私は、早速自分の部屋で新田恵美のビデオを再生した。こういう時、自分の部屋にビデオがあるというのは素晴らしいことだ。

 初めて借りたエロビデオなので、ストーリーさえ完璧に覚えている。
 素人参加ビデオで、新田恵美の相手役は一般公募で選ばれたバーテンだった。私だったら、相手が常盤貴子だったら応募するかもしれないが、他ではちょっと応募はしないだろう。応募したこと自体が一生の傷になりそうだ。
 そして新田恵美が出てくる。

「皆さん、こんぱんは。新田恵利でえぇぇーーす……あ、間違えちゃったぁ」

 始めの言葉がこれだ。いまだに覚えている(笑)。

 風呂上がりみたいな格好をした、バーテンと新田恵美がベットでインタビューを受ける。
「今日の相手は、隣にいる新田恵美ちゃんなんですけど、どうですか?」
「いや、こんなに可愛い人が相手で光栄です」
「さっき、トイレに行かれたようですけど、なにしてたんですか?」
「えーと、すぐにいかないように、一発抜いておきました」
 彼は至極真面目な顔でそう言った。

 そして45分後、ビデオは終わった。
「まあ、こんなもんだろう」
 というのが正直な感想だった。やることをやった後の、疲れ切った表情でインタビューを受ける二人が印象的だった。

 この後、この新田恵美のビデオはクラス中を回ることとなった。
 これで初めてエロビデオを見たという人も多かったのではなかろうか。
「おいおい、あの新田恵美ってやつ馬鹿だよな。『新田恵利でーーす』とか言ってんの」
 などとクラスで話題になっているのを見て、
「俺たちの勇気が、みんなを大人に近づけさせたんだな」
 と、佐藤君と二人で頷き合った。

 あれから13年。エロビデオを借りることはめっきり少なくなったが、あの頃のときめきは忘れていない。

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