シモネタ系エッセイ-8 不幸的ハプニング

1998年9月21日執筆


 不幸的ハプニング(道に落ちていた犬のうんこを、知らないで踏んでしまうといった類のもの)は誰にでも起こるはずである。それは、広末涼子であっても、藤原紀香であっても、(自主規制)であっても、例外ではないはずだ。
 地球上で生物として活動している限り、そういったことが一度も身に降りかからない方が不自然である。
 私が見てきた中だと、野球部の西山君(仮名)が、友達にキャメルクラッチ(うつ伏せ寝している相手に馬乗りになり、あごを持って思いっきり反らせるプロレスの技)をかけられて失神したことや、バスケ部の福田君(仮名)が、下校途中に友達に突き飛ばされ、畑にあった牛糞の山に顔から突っ込んだことなどが不幸的ハプニングに当たると言えるだろう。
 だが、そういったことは“人に見られていた場合”を除き、自ら進んで告白する人はあまりいない。

 私も、今日書く、自らの身に降りかかった“不幸的ハプニング”は、これまで誰にも言ったことがなかった。どうして書く気になったのかと言えば、私が万が一、自己啓発セミナーに行った時、泣きながら自分の傷として告白するよりは、こういう場でさっさと言っておいた方が洗脳されずに済むと考えたからである(笑)。

 あれは、今から17年ぐらい前、ガンプラの「ボール」が100円でも売れ残っていた頃の話だ。

 北風が吹きつける寒い冬の日。
 地元の少年野球団に加入していた私は、いつものように凍える体をさすりながら、バッティング練習などをしていた。鼻水がずるずると止めどもなく垂れ下がってきたが、そのたびに鼻をすすり、ユニフォームの袖で拭く。
 しかし、拭いても拭いても鼻水(粘着系=俗に言われるあおっぱな)は垂れ下がってきて、しまいには、もうめんどくさくなったので放っておいた。そのままにしておけば、そのうち固まるだろうという計算があったのだ。
 そして、鼻水が鼻の穴を完全に埋め尽くした時。さすがに息苦しいと思いつつ、素振りをしていると、突然、鼻に何かが飛び込んできたのを感じた。
(ん? ……なんだなんだ?)
 幸いにして、みんなは練習に夢中である。フリーバッティング練習も、次の次ぐらいが私という感じでまだ時間がある。
(よし、ほじってみよう)
 私は他の人間が見ていないことを確認すると、一人だけ違う方向を向き、異物が飛び込んできた方の鼻の穴に指を入れ、ほじってみた。
(……)
 やはり、鼻水以外の手応えがある。
(なんだろ)
 気持ち悪いし、こうなったら取り出すしかない。
 私は黄色い鼻水とその異物を、掻き出すようにして取ると、人差し指をスポッと抜いた。
 そして、その先を見た。

 ハエが鼻水まみれで死んでいた。

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