ネット話系エッセイ-11 では
1999年6月14日執筆
某知人女性(友人ではない)と年に数回メール交換をする中で、ほぼ毎回むかっとすることがある。
タイトルが常に「RE:○○○○○←私がつけたタイトル」という形なのも、むかむかすることの一つなのだが、一番こみ上げてくるのは文章が「では」で締められていることだ。
「では」という言葉が持つ、独特の距離感と壁、そして冷酷性。よくあそこまで使えるものだと感心する。
例えば、彼女を食事に誘ったとしよう。
メールを使って誘っているので、彼女からの返事もメールで来る。
Subject:RE:今度食事にでも一緒に行かない?
こんにちは。
ごめんねー、最近忙しくてご飯食べに行けないよ。なんかさー、肉体的にはそうでもないんだけど、精神的に参ってて駄目なの。本当にごめんね。
では。
一カ月後、水族館に誘ったとしよう。
Subject:RE:江ノ島水族館のラッコ
こんにちは。
あたし、水族館ってあんまり興味ないんだよね。せっかく誘ってくれたのに、こんなこと言うの申し訳ないんだけど……。
どっちかと言うと、植物園の方が好き。植物って見ていると、心がなごむから。
では。
続いて植物園に誘ったとしよう。
Subject:RE:江ノ島に植物園があるんだけど……
こんにちは。
ごめん、その日って飲み会だぁ。なんかさ、あたしはあんまり行きたくないんだけど、友達が一緒に行こうってうるさいから、仕方なく行くことにしたの。
あたし、疲れているのに誘うなって感じだよね。ほんと。
では。
この後、性懲りもなく動物園に誘ったとしよう。
Subject:RE:横浜に新しく出来た動物園
こんにちは。
その動物園って聞いたことある! 雑誌に載ってたよ。でもさー、なんかあんまり動物とか見れないんだって。つまんなくない?
それに、その日って残業っぽいんだ。まあ、まだわかんないけどさ。とりあえず、約束は出来ないっていうことで。
では。
現実的に、ここまでしつこく誘うことはないが、ノリとしては大体こんな感じである。夜、客が自分だけのラーメン屋さんでラーメンを食べて、お金を払って店を出たと同時にシャッターを閉められた時のような、(俺って、そういう存在だった?)という印象を十二分に与えてくれる。
向こうも多分、意図的に与えているんだろう。
ただ、こんなことでむかついている自分も情けないので、これからはもう少し大きな心で「では」を受け止めていきたいと思う。