恋愛系エッセイ-5 ラブレターの返事

1999年5月27日執筆


 昨日、月一度の恒例行事となっている「フロッピーディスクの整理」をしていると、1年ほど前、友人の高松君がわざわざテキスト入力してくれた自伝(勿論私の)を発見した。

 はじめに

 人はどうして生きるのか。目的は何なのか。多くの人々が直面する人生最大の疑問である。そして、それを見出すことが出来ずに死へと走った人が多いのも悲しい事実である。いくら現世で富を得ても、栄光を掴んでも、『死』という一種の無に、すべてが消されていってしまう。だが、人の一生のすべては伝説として語り継がれるであろう。そこに死にも勝つことが出来る『有』が存在するのである。

 そして今ここに、新たなるLEGENDが始まろうとしている。

 という大袈裟な序文から始まるこの自伝は、「高1の時の出来事」を高2の時に書いたものである(自伝は全部で3つある。中学3年の時に書き始めた[小学校1年から中学3年までの出来事を記録したもの]、高校3年の時に書いた[高校2年の時の出来事を記録したもの]、そして今回採り上げたものだ)。
 懐かしく思って読んでみると、こんな文章を見つけた。

 二、鯨井佐智子(仮名)からの返事

 それが四月だったか五月だったかは定かではない。が、多分四月であったと思う。春の風を全身に浴びて爆走していた私は、学校から十五分ほどで家に着く。ふと郵便受けを見ると何やら封筒のような物が入っていた。その瞬間、私は「鯨井佐智子か田中雪美(仮名)のどっちかだ」と直感した。封筒を取って裏を見てみると思ったとおり、鯨井佐智子の名前が書いてある(と思ったが書いてなかった)。私は緊張して手で封を切った。結果は開けた瞬間から分かった。少しではあったが見えた文字、『せっかく……』
 実際、開ける前から○高(鯨井の高校)と△×(私の高校)の差は歴然としていたものだった。封筒にデザインとして打ってあるタイプ文字を、実際に鯨井がタイプを使ったものと考え、真剣になって訳していた私。そもそも一枚の紙しか出てこなかった時、私は全てを諦めた。さあ、お待ちかね、あえて全文掲載コーナーだ!

 工藤くんへ

 映画に誘ってくれてどうもありがとう
 でも私いけません せっかく誘ってくれたのに
 本当にごめんなさい

 P.S. ちゃんとねるようにしましょー
      これからもお元気で

 さようなら

 鯨井佐智子

 お礼を言うぐらいなら一緒に行って欲しいものである。珍しく映画に誘うという半ば強引な手を打ったのに、ここではまるで役に立っていない。ここで私は男子校のハンデをまざまざと見せつけられたと思った(ここまで自伝)。

 この文章に、高松君が解説を付けてくれていた。

 この作品を書いていた頃、彼は非常に「偏差値コンプレックス」「高校名コンプレックス」が強く、勝手に「差は歴然としていた」と思い込んでいた。[高松]

 その通りだと思った。

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