第9回目の法則 女に告白したとき、「その気持ちはすごい嬉しい。だけど、好きな人に振られたばかりで、今は恋愛する気持ちじゃないの」と言われる『今』に、なぜか自分がよくあたる
シチュエーション
18歳の学生(女)と23歳の会社員(男)。二人はバンド「マジカルシャワー」のボーカルとギタリストである。
リーダーでもある男は、「バンド内の恋愛は解散の元凶」と思いつつ彼女への想いを募らせるばかり。秋を迎えて妙に人恋しくなってきた彼は、彼女が欲しいという思いも増幅され、ついに練習後、彼女を呼び出し公園で告白することにした……。
男
「ごめんね、急に呼び出しちゃったりして」
女
「ううん、どうしたの?」
男
「んー……ちょっとその辺座ろうか」
女
「うん」
二人、ベンチに座る。
男
「あの……さぁ、えーと……あのね(笑)」
女
「なあに?(笑)」
男
「俺、いつも冗談ばっかり言ってるけど、今から言うことはまじだから」
女
「……うん、わかったけど……なんか相談事?」
男
「相談事っていうか……まあ、とりあえず聞いてよ」
女
「うん」
男
「あのね……最近、好きな人が出来ちゃってさ」
女
「へー、鈴木君って彼女いなかったんだ?」
男
「前の飲み会でそう言ったじゃん」
女
「そうだっけ?(笑) それでそれで? どんな子なの?」
男
「実は、バンドの人なんだ」←回りくどい
女
「え? 由美ちゃん?」←由美ちゃんはキーボード担当である
男
「……由美ちゃんじゃないよ」
女
「……」
男
「……」
女
「それって……どういうこと?」
男
「どういうことって……だから、美樹ちゃんが好きってこと」
女
「……」←俯いてしまう
男
「……」
女
「……」
男
「……彼氏とかいるの?」←俯いた彼女を覗き込みながら
女
「……そういう人はいないけど……」
男
「じゃあ好きな人とかは?」
女
「……いないけど……でも」←顔を上げる
男
「でも?」
女
「わたし、鈴木君のこと好きだよ。でも……わたし、この間、好きな人に振られちゃったんだ。その時、結構傷ついて、だから今は恋愛のことは考えられない。もし、鈴木君がもっと早く言ってくれていればわからなかったけど……」
男
「……今は付き合えないってこと?」
女
「うん……ごめんね。今のわたしって恋愛出来る体質じゃないから……」
男
「そっか……」
もっとも法則と呼べるものかもしれない。
「今は恋愛する気分になれない」
「今は彼氏と別れたばかりで、人と付き合うなんて考えられない」
「今は彼氏はいらない」
言い方はいろいろあるが、共通する言葉は「今」。こういう言い方をされると、じゃあちょっと前だったら付き合ったのか、と突っ込みたくなるが、ちょっと前でもやっぱり「今は……」だろう。ひょっとしたら、一番、男性を傷つけずに振ることが出来る言葉かもしれない。適度に期待を持たせつつ、男性の優しさに頼る。「今は恋愛出来る体質じゃない」などと言われれば、無理矢理「それでも俺と付き合おう」とは言えないだろう。そして、「恋愛対象じゃない」なんていう言葉よりは遥かにダメージが小さいはずだ。
ここで更に押すことで気持ちの強さをアピール出来るとも言えるが、しつこい男とも思われる可能性もある。どっちに転がるかは男性の熱意と女性の恋愛観次第だろう。まあはっきり言って、以前、ZEROの法則で採り上げた「前の彼氏が忘れられないと言われたら駄目」と同じように、もし、告白された対象が自分の好みと合えば、「今は恋愛する気分になれない」が「今から恋愛する気分になれる」に変わるだろう。
まあ、そんなもんだと言われればそんなもんだ。