第八回 編集プロダクションからのメール 2


「テキスト王」作者の工藤です。メール、拝見させていただきました。有名漫画のオフィシャル本の編集を請け負うような、才能のある編集プロダクション様より声をかけていただき、大変光栄です。

 結論から先に申しますと、微力ながらもお役に立ちたいと思います。
 金田一少年の事件簿に関しては、週刊少年マガジン誌を毎週購読しているので、ほとんど全話読んでいますし、単行本の方も1巻から16巻までは持っている(中途半端ですが)ので、かなりの思い入れもあります。トリックのプロットも、考えるのはあまり苦にならない方なので、なんとか出来るのではと思います。

 詳細の方、またご連絡いただければ幸いです。

 それでは失礼します。

 高松君に電話をかけた後、私は早速、編集プロダクションにメールを書いた。

 メールにもあるが、私にとってラッキーだったのは、この時点で週刊少年マガジンを毎週買っていたこと、そして、金田一少年の事件簿のコミックスをある程度持っていたことである。
 お涙頂戴になるので書くのに気が引けるが、金田一少年の事件簿は入院中の母親の気晴らしにでもなればと買ったものであり(今思うと、癌で余命のない人に読ませるものではない)、それを自分で読んでみて面白かったので、金田一が連載されている週刊少年マガジンも買い始めたのだ。
 母親のために買った漫画が、作家になりたいという自分の夢にかかわってくるとは、まったく持って縁とは不思議なものである。

 そして数日後。再びメールが届いた。

 先日『金田一少年の事件簿謎解きファイル2』の件でメールを差し上げた*******の**です。さっそく協力していただけるとのご返事をいただきありがとうございます。

 さて、『金田一少年』に関するプロットのお願いですが、他に大学の研究会等にもお願いしてありますので、工藤さんには全部で20~30ほどの案を出していただいて、最終的に採用したものに対して原稿料をお支払いするという形になります。お願いした方々のご返事がそろいましたら詳細をご連絡しますが、今の時点ではこんなところです。一度、電話にてご連絡ください。私、**は朝があまり得意ではないので、できれば午後2時以降に…。

(……)
 私の目は、しばらくの間、ある一行に釘付けになっていた。
(大学の研究会にもお願いしてありますので……か)
 今回の依頼は、私に単独かと思っていたのだが、どうやらそうは甘くなかったようである。
 大学のミステリー研究会というと、京都大学のそれが有名だ。綾辻行人氏登場後、それこそ雨後の竹の子のように、推理小説界へ湧き出てくる京大ミス研の皆様。そんな人たち相手に、専門学校を3日でやめた男の才能が通用するんだろうか。
(でも……)
 私はブラウザを閉じてから思った。
(やるしかねぇよな)
 そうだ、このチャンスを逃す手はない。タイミングのいいことに、バイト(派遣)は休みだし、彼ハムも書き終わっている。相手が京大だろうが早稲田だろうが慶応だろうが、自分の面白いと思ったことを書こう。わざわざ頼んで来るぐらいだから、最悪、1つか2つは採用してくれるに違いない。それに、ミス研の人間なら、トリックのことには詳しいかもしれないが、私にはそれを使って話を書けるという彼らにはない(あるかもしれないが……)長所がある。トリックをそのまま出すのではなく、それに付随して面白おかしい話を書けば、きっと評価されるはずだ。

 私はそれから二週間、プロット作りに全精力を投じた。お金になるかどうかわからないことだったが、彼ハムの時と同様、連日徹夜もした。
(よし、ノルマ出来た!)
 そして無事、期限までに23のトリックとそれを使ったストーリーを書き上げ、メールで送ったのである。
(なんとか、やり遂げることが出来たなぁ……)
 彼ハムを完成させ、今回の依頼もなんとかこなせた。今まで、いろいろと言うわりには内容が伴わなかった自分の作家志望生活も、ようやく、それらしくなってきたようである。
 結果はまだ出てないが、それでも多少は夢に近づいたような気がして、私はなんだか嬉しかった。

 翌日。

 編集プロダクションからメールが届いた。

 工藤圭様

 *******の**です。

 謎解きファイルの件ですが、工藤さんの他に依頼した方々の原稿がまだほとんど揃っていない状態です。他の原稿とのかね合いもありますので、まだ詳細を検討できていません。すみません。
 工藤さんにいただいた原稿は、金田一少年の登場人物をうまく使って大変楽しく出来ていると思います。ただ、こちらとしてはありがたいことなのですが、プロットがちょっと長いので、実際には割愛させていただく部分も出てくることになります。ご了承ください。
 私どもは、明日(5月2日)から連休に入ります。内容などについてご相談させていただくのは、その後になります。もし、またいいアイデアがありましたら、ラフなものでも結構ですので、送っていただけるとうれしいです。出典を書き出していただければ、オリジナルでなくてもOKです。
 では、よろしくお願いします。

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